CB建築の講義・その14~用を超えて

山之内裕一・山之内建築研究所

建築は、用・美・強が重要だと言われる。その言葉は古く、古代ローマの建築家・ウィトルウィウスが紀元前に著した最古の建築書に出典がある。(邦訳は森田慶一・京都大学名誉教授訳・註、1979年)

北海道のコンクリートブロック住宅の起源を調べていくと、寒さへの戦いに行きつく。防寒住宅の機能を満たす「用」を目指していたことがわかる。前回、私は「二重壁と二重積み」を考察した。それは主体構造をコンクリートブロックとしつつ外装壁の多様性を認める二重壁と内外コンクリートブロック二重積み、二つの異なるアプローチがあるという指摘だった。これらは、どちらも機能としての「用」を論考している。かつてこのコラムでは、三角屋根コンクリートブロック住宅群がつくる景観「美」や幾何学「美」に通じる事例を多く取り上げてきた。私もそうだが多くの建築家が用・美・強をいわばセットで思考する。ここまで多く論じてきた熱環境をテーマとする「用」アプローチのみならず「美」や「強」の可能性が残されている。

先日、二重壁工法の先駆者・鈴木憲三邸を訪問した。外断熱による理想的な温熱環境を備え、太陽熱温水器を併用した給湯システムで光熱費は通常の1/10程度に抑えられているという。内壁コンクリートブロックは白色塗装され、落ち着いたインテリアによる居心地の良い雰囲気を醸成している。今回、鈴木憲三氏のご好意によりその一端を掲載することができた。 この講義シリーズも14回目となった。講義としてはまだまだ物足りないが、ひとまず閉講とし、次回からブロック住宅の今日的話題を掲載したい。

鈴木憲三邸  詳細情報

  • 所   在:北海道札幌市東区
  • 構 造 規 模:補強コンクリートブロック造、3階建
  • 建 築 面 積:62.72㎡
  • 延 床 面 積:137.64㎡
  • 竣    工:1996年
  • 設 計 監 理:鈴木憲三
  • 施  工:株式会社よねざわ工業
  • 撮 影:山之内建築研究所

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