CB建築の講義・その7~二重壁工法
山之内裕一・山之内建築研究所
北海道のコンクリートブロック住宅が他の地域と異なるのは、寒冷地に適応した合理的工法が存在するからである。1970年代後半、荒谷登・北海道大学教授によりブロック造外断熱工法が試みられた。同時期には外装材にコンクリートブロックを用いた二重壁工法が登場する。北海道で最初に設計した鈴木憲三・北海道工業大学教授によれば「ブロック造二重壁工法とは、補強コンクリートブロック造を外断熱し、その外装仕上げにブロックを化粧積する工法」と定義されている。(出典:日本建築学会技術報告集第10号)
ブロック二重壁工法登場は、当時の北海道で建築家たちの強い関心を集めた。私も例外ではなく、いくつかの住宅設計で試みている。今回、そのうちの一つ「藻岩下の家(1996年竣工)」で最近実施した補修工事を紹介する。
「藻岩下の家」は斜面上に建つ円形平面の住宅。2階は1/4円の平面で、北側に窓のある外装材コンクリートブロック端部が現れる角にひび割れが生じた。当初、ひび割れの原因は何らかの力学的なものだと考えられたが、経験豊かな職人が目視した結果、凍害に起因するものと結論付けられた。当初の設計は、外装材をA種100㎜厚ブロックとした。二重壁工法の外装材は地震力を負担しない帳壁扱いだからだ。しかし今回の補修工事では、圧縮強度が倍増し、吸水性が低く凍害に強いC種ブロックへ変更した。工事中、外装材ブロックを取り除き、27年前の外断熱施工状況を確認、とりたてて異常は無かった。ひとまず一件落着ではあるが、補修工事から学ぶことの多さを痛感。そして魅力的に蘇る姿にすこし感動している。
藻岩下の家 詳細情報
- 所 在 :北海道札幌市南区
- 構造・規模 :補強コンクリートブロック造二重壁工法、2階建
- 敷 地 面 積 :991.53㎡
- 延 床 面 積 :218.56㎡
- 設 計 監 理 :山之内建築研究所/山之内裕一
- 施 工 :沼田建設
- ブロック施工:よねざわ工業(補修時)
- 竣 工 :1996年
- 外装材補修 :2023年
- 撮 影 :安達治(竣工時)、山之内建築研究所(補修時)
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