厚沢部の家

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

新聞や雑誌などの紙媒体の力、切り取りスクラップできるモノとしての記録力を実感したことがあります。

建築家の集まりである公益社団法人日本建築家協会(JIA)北海道支部で1992年に住宅部会が発足すると、私が住宅部会世話人になりました。すぐに住宅設計の専門家の立場から住まいづくりを目指す、という「宣言」を地元紙が掲載してくれました。数年後、記事を読んだ方から自宅の新築を考えているのだが、誰か適当な建築家を紹介してほしいという内容の一通の手紙を頂戴しました。敷地は、私の住んでいる札幌市から、200キロメートルほどの遠距離にあり、当時は建築家が皆無の地域です。そこで、私でよければ新築のお手伝いを希望しますと、意欲的に返事を書きました。折り返し、設計を依頼したい旨の返信が届いたのです。厚沢部の家が動き出した瞬間です。  

実はクライアントが記事を切り取ってスクラップしていたそうです。専門家の立場から、北海道(地域)ならではの住まいづくりを目指し、例えば照明から街並みまで住生活の全般にかかわるのが建築家、という紙面に込めた私の想いが伝わり嬉しくなりました。 設計が始まり改めてクライアントの要望を整理することに。一言で表すと、安全に暮らせるしっかりした性能を備えた住宅です。当時、私はCB造住宅をいくつか試みており、迷いなく1階をCB造の外断熱工法、2階はツーバイ材を正三角形に組み合わせた柱のない木造モノコック構造を提案し、運よく実現することになります。暖房は経済的な深夜電力を利用する蓄熱暖房機を各室個別に配し、給湯は同様に電気温水器を備え、さらに当時の省エネ基準を超える断熱性能としました。

私は、住宅設計につきもののこまごまとした要望に対して緻密な検討を重ね、丁寧な現場施工を経て、クライアントの満足を得ることができたと思います。インターネットメディアが勢いを増す現代ですが、これからも新聞や雑誌などの紙面には住まいづくりを育む強い力があると信じています。

厚沢部(あっさぶ)の家  詳細情報

  • 所   在 :北海道桧山郡厚沢部町
  • 構造・規模 :補強コンクリートブロック造一部木造、2階建
  • 敷地面積 :352.47㎡
  • 延床面積 :195.56㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :小林建設
  • 竣  工 :1995年
  • 撮   影 :安達 治

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