建築の捧げもの
山之内裕一・山之内建築研究所
建築家は設計を生業とする職業人で、自らは現場作業などの建設には直接関わらない。しかし最初の言葉を発する設計行為がなければ建設が始まらない。設計者の言葉の共有(建築リテラシー)と設計の全体像(建築アイデンティティ)の理解が重要なのである。毎年開催される日本建築学会北海道支部「建築作品発表会」は設計者の声を届ける貴重な機会であり、私もブロック造住宅の改修例を発表した。当日の設計者・山之内の声を再録する。『山之内です。よろしくお願いいします。「美しが丘の家・改修」です。圓山さんたちの名作パストラルタウンから南へ300mの距離にある、2006年に竣工した戸建住宅ですが、その後、所有者が変わり、今年2024年に改修をしました。その改修事例報告です/2006年の写真です。陰の部分は道路に開いたカーポート、玄関ポーチです。/どういう改修かと言いますと、左が既存住宅ですが、カーポートと玄関ポーチを、右側の今回改修では内部化し、何にでも使える場所「風除室」として「住み継ぎ」をしました。/「風除室」です。フロスト加工のガラスブロック壁で閉じています。/ガラスブロックは優れた建築材料で、LOW-Eペアガラス同等の熱貫流率があるため常温で結露しない「風除室」がつくれます。そこに「スーパー楕円、スカルパ、アアルトなど家具のある暮らし」が持ち込まれました。/既存玄関です。既存コンクリートブロック造住宅です。/既存玄関からの見返しです。/既存居間です。カラフルな家具のある暮らし方をされています。/既存ダイニングキッチン。ここにも家具があります。/「住み継ぎ」は2つの視点があると考えています。一つは「時間のなかの建築、既存コンクリートブロック造住宅の器」もう一つは「新しい所有者が持ち込む家具と新設された風除室による暮らし」です。「器と暮らし」この2つの視点が、住み継ぎを可能にした、と考えています。ありがとうございました。/(この間、写真9枚を映す。)』持ち時間3分間の全発言を載せた。言葉より画像、さらに現実の建築物が強い力を持つのだが、小さくても言葉を届けたい、今年もそう思うのである。
- 撮 影:佐々木育弥