脱炭素と新市場創造 成長と進化の新たな幕開け 

新しい年2025年が幕を開けた。今年は巳年。脱皮しながら成長する蛇は、その生命力から「不老長寿」を象徴する動物、または神の使いとして信仰されてきた。十干十二支では乙巳(きのとみ)で、「努力を重ね、物事を安定させていく」という意味合いを持つ年らしい。それは成長の頂点に達し、次なる飛躍を目指す年とも理解できる。もう少し詳しく、2025年「乙巳」の年回りを読み解いてみよう。

●乙巳の年とは

専門家によると「乙」は、植物が芽吹きしなやかに伸びる姿を表しており、新たな可能性や発展途上の状態を示唆している。一方、「巳」は成熟と変化の象徴で、植物が成長の頂点に達し次の段階への準備を始める状態を暗示する。胎児の形から派生した文字で、「復活と再生」を意味することから、生命力や不老長寿の象徴とされる蛇と結びついた。この2つの文字を組み合わせた「乙巳」の年は、努力や準備が結実して次の進化を模索するタイミングとなることを暗示していると言えそうだ。2025年は、これまで積み重ねてきた成果を土台に、新しい価値や成果を生み出す年となりそうで、その実現には変革も求められる。社会や経済の動きに柔軟に対応する力が欠かせない。かなり2025年の姿が見えてきたが、60年前の乙巳の年、1965年(昭和40年)はどのような年だったのだろうか。

●60年前の乙巳の年に学ぶ

この年の10月、日本の高度経済成長を象徴する戦後最長の好景気「いざなぎ景気」が始まった。朝永振一郎氏がノーベル物理学賞を受賞することが決定し、前年に開業を始めた東海道新幹線が当初計画していた東京・新大阪間3時間10分の運行を開始。これに合わせたように、1970年の大阪万博開催が決定した。地方と都市のつながりが強化されるだけでなく、三種の神器と呼ばれた冷蔵庫、洗濯機、テレビが広く普及して日本人の暮らしに豊かさと利便性をもたらした。日本初のカラーテレビアニメ「ジャングル大帝」の放映が始まり、大塚製薬のオロナミンCが発売を開始したのもこの年だ。巷では加山雄三の「君といつまでも」、都はるみの「涙の連絡線」、北島三郎の「函館の女(ひと)」がヒットした。また、米軍がベトナムで北爆に着手し、中国では毛沢東が「文化大革命」を開始。宇宙開発競争が激化し、アメリカのアポロ計画が進展した。日本と大韓民国が日韓基本条約を結び国交を回復した。このように1965年は、冷戦下での技術革新が進む中、新しい時代への期待と緊張が交錯していた時期で、日本や世界にとって転換点となる出来事が多く起きた。こうした動きは「乙巳」の年の象徴である成長と変化を端的に示していると言える。

この年の週刊ブロック通信を読み返すと、当時は空洞ブロックの出荷量伸び率は漸減傾向にあるものの、各地でブロック建築技能士会が開催され、アメリカへの視察旅行が行われるなど、業界が活況を呈していたことがわかる。前年度の空洞ブロック生産量は、4億個を突破した。生産性向上に向けた取り組みも活発で、千代田技研工業が日本初のスプリッターを開発。7月には経産省の補助金を活用して、新日本ブロック(現エスビック)などが産学連携で連続養生装置の技術開発に着手した。また11月には関東小野田ブロック(埼玉県熊谷市)の防水ブロック工場が竣工。落成祝賀式には200名が参加したとある。

土木用コンクリート製品業界の活動も活発で、7月には全国土木コンクリートブロック協会が会員社176社で発足。初代会長に共和コンクリート工業の篠公平氏が就任した。また8月には全国コンクリート製品協会が今年度の出荷量は前年度を15から20%上回るとの予想を発表している。日本の高度成長をコンクリート製品業界が支えていたことがよく分かる。

●新たな挑戦の年

2025年は60年前とは状況が全く異なる。むしろ日本経済のピークアウトと失われた30年で、鉱工業生産は当時のレベルまで低下している状況だ。それだけに、未来に向けた準備と挑戦はなおさら重要になる。

コンクリート製品業界では、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みが加速し、脱炭素技術の導入や持続可能な資材の開発が急務となる。また、再生可能エネルギーの普及や都市開発の進展により、環境負荷の少ない製品やリサイクル技術の需要が高まることが予想される。こうした動きは、新たな市場を創出する機会であると同時に、業界が取り組むべき重要な課題でもある。

柔軟性と革新により、未来を切り拓く一年となることを期待したい。

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