そして組積造

私にとって組積造の始まりはブロックではなくレンガだった。20代初めての海外旅行でバングラデシュ国会議事堂建築群のレンガとコンクリートの美しく力強い姿に遭遇した。その時から建築家・ルイス・カーンは私にとって特別な存在になった。およそ30年後、米国でルイス・カーンの建築に再び遭遇した。フィリップ・エクセター・アカデミー図書館である。後で知ったことであるが、私が訪れた2003年頃、かのファイスブック創始者のザッカーバーグが在籍していた。

今回改めて調べたところ、建築材料の解説がアカデミーのホームページにあった。それによると使用レンガは地元エクセター産で、メーカー名も記してある。ここでもバングラデシュ同様に地域に対する深い関りが確認できた。この地域ではレンガが似合うのだ。建築は6層の吹抜けを中心に、書架スペースをその周りに配し、さらに2層ごとに閲覧スペースをレンガ造で取り囲む。外観は、東西南北ほぼ同様に2層ごとに大きな窓を持つ4層のレンガ組積造に見せている。レンガ自重は、下階の壁で受けるため窓は下階ほど小さくなる。伝統的なレンガ組積造の約束事である。アーチを水平直線で切り取る水平アーチが開口部を支える。これもローマ時代から続く伝統的手法。書架と閲覧スペースとの間に暖炉のある休憩スペースがある。その暖炉も同じレンガの水平アーチでたき口が作られている。アーチというレンガ組積造の物理原則が、現代建築家ルイス・カーンの手でこうした細部にも踏襲されている。私が魅了されたレンガ組積造のキモがここにあるのかもしれない。建築には素材と工法が密接に連関する長い歴史があるのだ。

(山之内裕一/山之内建築研究所)

2020年11月30日第3115号

そして組積造 詳細情報

  • フィリップ・エクセター・アカデミー図書館
  • 所  在:ニューハンプシャー州エクセター(USA)
  • 設  計:ルイス・カーン(1901年生~1974年没)
  • 施工期間:1965年~1972年
  • 写  真:山之内裕一(撮影2003年10月)

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