庭づくり3年と人新世

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

この夏、3年越しで計画していた住宅の庭が完成した。当初、庭は住宅と同時に整備される予定であったが未完のままだった。しかし、住宅に住み暮らし時間をかけ庭づくりすることは、良い庭をつくる合理的方法でもある。そして、その3年間に物置小屋を増築することになった。物置小屋の増築は私にとって設計のキモだ。事実3年の短期間でつくられてはいるが、幾世代の時間をかけて紡いでできる形姿を意図的に構築する試み「小屋群住居」の構成要素だからだ。庭と物置小屋、どちらも時間がキーワード。

敷地は、かつてナナカマドや白樺の原生林に覆われた森の記憶を残す傾斜地。住宅は、等高線沿いに建つコンクリートブロック平屋、庭を介して森と向き合っている。全室から庭が眺められ、運が良ければキタキツネやエゾリスが森から飛び出す姿を目撃できる。庭は、森からの勢いを止めることなく、なるべく自然と同化する植栽計画とした。人間が自然に働きかけ環境が変化する関係性は、近年よく目にする地質年代を想起させる。地球年齢は46億年、とてつもない時間。現在、氷河期が終わり完新世という地質年代を1万1700年過ぎた。特に第二次世界大戦後、経済活動が活発になり環境への影響が著しい現代の新しい地質年代を「人新世」と呼ぶことが提唱されている。北海道のコンクリートブロックが盛んになる時期と重なるのだが、その考察は別の機会としたい。

小屋群住居A  詳細情報

  • 所   在 :北海道旭川市
  • 構造・規模 :補強CB造一部木造
  • 敷地面積  :1,040.76㎡
  • 延床面積  :144.20㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :フロンティアホーム
  • C B 工 事:よねざわ工業
  • 造園工事   : グリーン造園
  • 植栽監修 : キクノ花園計画・Miki Sato
  • 竣  工 :建築2018年、外構2021年

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