長い時間に暮らす

設計／山之内裕一・山之内建築研究所

11月、今年もとうとう北海道に白い冬がやってきた。これから4月まで、およそ半年もの長い季節、室内で過ごす時間が多くなる。寒冷地では住宅に限らず、寒さに影響されないしかも飽きのこない屋根や外壁に囲まれた内部空間が求められる。ことに北国では風雪から私たちを守ってくれる信頼できるシェルターが必要になる。そこで選ばれたのがコンクリートブロックだった。外装材100ミリと構造蓄熱壁190ミリのコンクリートブロックの間に、断熱材フォームスチレンボードと空気層を挟み込んで、390ミリの堂々たる外周壁を構成している。

今回はコンクリートブロック造二世帯住宅の20年目のレポートである。20年前は、比較的工事費も廉価に抑えられた。地元の職人の手で積まれ、地元産の素材であるという安心感があった。一階は母親の家、二、三階は娘家族の家である。親と子の二世帯住宅という「時間」を意識させる計画内容もまた、ブロック素材のもつイメージにふさわしいと思えた。20年の間に、新しい世代が誕生した。当然使い勝手を更新することになる。今回、母親の居間にある畳敷きの小上がりを中止し、床をフラットにする計画が持ち上がった。ブッロク躯体を変更するのは難しいが、木造の間仕切りや床天井を更新するのは容易である。長く変化しない部分はコンクリートブロックでつくり、後から時間と共に追加できる変化する部分は木造でつくった。長い時間の中で可動部分と固定部分が住宅にはある。住まい手も、新築時には想像できないものもあり、徐々に必要な状況に適応していく。今回の改変などはそのよい例であった。長い時間をもつコンクリートブロック、そして木材もできるだけ無垢材を用いた。「時間」との相性を最大限に生かした住宅である。