集落を目指す戸建住宅

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

小屋群住居Oは、一つの住居を複数の建築に分割し、敷地の形状に合わせて配置、再構成された戸建住宅である。ライフスタイルの変化に伴って変遷を繰り返すのが住宅の真相。その痕跡が住まい手の歴史を表象する民家となり、味わい深い町並みを生む。私は、そうした民家の配置と構成を計画当初から採用することで町並みの核をつくることが可能になると信じている。たかだか1軒の戸建住宅であっても、そうしたチカラを建築は備えているからだ。

敷地は、三方を道路に囲まれたいわば半島の突端のような場所で、360度全方位に視界が開けており無防備なほどに開放的である。したがって、日常生活に必要な囲いが求められた。囲いは外壁に使用した燻煙木材の塀と建物自体でつくられた。配置は、母屋と車庫と外部渡り廊下を併置し、敷地の南側が広がるようにしている。敷地の中央には、道路と平行にした車庫棟、角度を南北軸に合わせた母屋棟それに直交させた渡り廊下棟で囲い込まれた中庭を配した。平面は、1階居間と2階書斎を吹抜けで開放的につなぐ構成とした。構造は、補強コンクリートブロック造による壁式構造で堅牢な1階を構成した。北国に必要な断熱層を施したそのうえで、2階と屋根を在来工法の軸組木造で覆っている。断熱蓄熱効果を期待できる壁体をつくることができた。仕上げは、隠すことのできない裏表のない直截な素材である。無垢の床板、合板の壁天井、そして工場から出荷されたままのコンクリートブロックの壁、打放しのコンクリート天井と梁がせめぎ合い独特な空気感をつくっている。現在、全国的に設計事例が極端に減少しているものの、戸建住宅としての可能性を引き出していくことが可能な取り組みだと考えている。

小屋群住居O  詳細情報

  • 所   在 :北海道札幌市北区
  • 構造・規模 :補強コンクリートブロック造、一部木造、2階建
  • 敷地面積 :305.67㎡
  • 延床面積 :159.43㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :岩田住宅商事株式会社
  • 竣  工 :2013年
  • 撮   影 :安達 治

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