コンクリートブロックと煉瓦
山之内裕一・山之内建築研究所
建築家・上遠野徹が設計した自邸。南面の大開口デザイン等、寒冷地札幌の先駆的実験住宅です。構造形式は鉄骨造、煉瓦積外壁が美しい。煉瓦積の内側に隠れ見ることができないコンクリートブロック壁がある。そもそもそれは、どういう理念によるものなのか考察してみたい。
あらためて矩計図を検証。煉瓦+コンクリートブロック+EPS断熱材+石膏ボード+クロス貼の順に並ぶ。特に煉瓦+コンクリートブロックは組積躯体としてひとくくりでき、それと鉄骨フレームの組み合わせで構造全体ができている。そして肝になるデザインが煉瓦と コルテン鋼とでつくられる。コルテン鋼は安定錆が錆の進行を防ぐメンテナンスフリー鋼材です。煉瓦も同様に維持管理と圧倒的存在感から選択され、手頃なコストや施工性の良さから選ばれたのが、風土的建築素材コンクリートブロック。外壁鉄骨フレームに配し、壁量をかせぎ構造安定性を求めています。コンクリートブロックは芯材として煉瓦とともに組積躯体を形成、高価な表面材と廉価な芯材を組合せ、単一材では得られない経済性を実現している。そして技術と有用性を兼ね備えた合理的デザインの考え方を示しています。
印象的相似性が指摘されるミース・ファンデルローエのファンズワース邸外壁は1/4インチ厚(約6㎜)単板ガラス、他方、上遠野邸は100㎜のEPS(ビーズ発砲スチロール)断熱材。シカゴ近郊と札幌はどちらも寒冷地で両者の年平均気温の差はわずかですが、住宅の温熱環境性能の差は対称的に大きい。
上遠野自邸(札幌の家) 詳細情報
- 設 計 :上遠野徹(かとの・てつ)
- 施 工 :三上建設
- 所 在 :北海道札幌市南区川沿
- 構造・規模 :鉄骨造、2階建
- 敷 地 面 積 :1,387.72㎡
- 建 築 面 積 :276.31㎡
- 延 床 面 積 :305.78㎡
- 竣 工 :1968年
- 増 築 :1982年
- 写 真 :上遠野建築事務所(撮影:宮下正寛)
- 図 版 :上遠野建築事務所
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