手頃な住宅へ
山之内裕一・山之内建築研究所
私のような住宅設計監理を主戦場としている建築家の眼には、近年の着工件数の減少や工事費の高騰が映し出す光景が必ずしもバラ色ではないように感じています。特に新築戸建て住宅が激減するという将来予測に対しては、心の準備が必要だと思います。建築の長い歴史の中で住まいは生きていくうえで必要な環境として、さまざまな分野で科学的に研究されてきました。近年、暑さ寒さから住まい手を守るシェルターとしての機能は格段の進歩を遂げています。またセンスの良いデザインや快適さを感じさせるプランなど、設計力と施工精度の平均値が向上したことで適切な住宅が用意されています。しかしそれでもなお不安がよぎります。それは、それらの適切な住宅を誰でもが手に入れることができるのだろうかと疑問に思うからです。かつてはローコスト住宅というカテゴリーがありました。それは、平均的な購買層が無理なく手に入れることができるように、コストを抑えるためのさまざまな設計及び施工上の創意工夫が込められた住宅でした。歴史を振り返るとコンクリートブロック住宅もまたそうした意匠性と機能性を兼ね備えた、しかもリーズナブルな価格帯のローコスト住宅がスタートでした。普段は外部に使用するコンクリートブロック素材を、構造体兼仕上げ材として素地のまま用いたのです。その結果、無機質な表情は「まるで倉庫のようだ」との冷ややかな反応を耳にしながらも1980~90年代の北海道では、多くのコンクリートブロック住宅が誕生しました。当時の主流は断熱材を中央にはさみ込みコンクリートブロックを2重積みする工法でしたが、いまは高級仕様です。そうした状況で私が近年試みている住宅設計は、基礎はコンクリートブロック造、壁を補強コンクリートブロック造、屋根を木造とするハイブリッドな外断熱工法です。これは、工事費とデザインの両面から、また温熱環境の優れた、ことに北海道では私たちが目指すべき方向にある「手頃な住宅」と考えています。

江別の平屋Ⅰ本紙第3119号 撮影:佐々木育弥 
江別の平屋Ⅱ 本紙第3169号 撮影:佐々木育弥 
厚別東の家 本紙第3358号 
カスタマイズできる家 本紙第2997号 撮影:佐々木育弥


