地面にこだわるブロック造

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

「いい家をつくってください。」そう依頼されて始まる家づくり、何をよりどころに設計していくのか、設計者としていつも初めに考えることがある。比較的リーズナブルなコンクリートブロックで蓄熱体として活用可能な堅牢な躯体をつくる。それに外断熱したエコ住宅を目指す。そうした道筋を踏まえたうえで、私は個々に与えられた敷地いわば地面をどう読み解くのかが鍵となるのだと考えている。

美しが丘は、札幌市の郊外にあって、北海道の空の玄関口新千歳空港に至る国道沿いに広がる新興住宅地である。敷地は、100坪ほどの正方形に近い形状である。もともと敷地角に立っていたミズキの大木は、この地面の記憶を伝えるシンボルツリーとして残した。ここにしかない雰囲気をつくるとともに、設計の重要な手がかりになった。

施主は地面のないマンションの高層階に居住していた経験から、地面そのものへ憧れと庭づくりの夢を抱いていた。戸建て住宅の大きな魅力のひとつは、そうした接地性にある。設計に際しては、地面との関係性をできるだけ意識できるように配慮した。来訪者は敷地南側の前面道路からスロープで引き込まれるように下り、玄関に至る。居間は、正確に南に向けた。そして全幅4mの木製断熱サッシ開口によって開放的に庭と連続している。木製デッキもまた庭と居間をなめらかにつないでいる。

美しが丘の家は、地面の魅力を最大限に活用した住宅である。北国におけるエコ住宅の基本は、南に開き北に閉じること。太陽光のダイレクトゲインの恩恵を南側で受け、逆に熱負荷の大きい北側では面積を最小限に抑えたい。こうした理由から北東側外壁は、コンクリートブロック曲面積みとした。隣家の庭つまり敷地の北側に、一匹の子犬が犬小屋とともに陣取っていた。北東側を曲面にしたことで、犬小屋を日陰から救うことになった。曲面外壁の効果は、予想を上回るものであった。直射光による影を作らないばかりか、天空光の拡散や曲面の反射効果も期待できる。地面にこだわった結果、周辺環境に配慮した住宅ができたと考えている。

美しが丘の家  詳細情報

  • 所   在 :北海道札幌市清田区美しが丘
  • 構造・規模 :補強コンクリートブロック造一部木造、混構造
  • 敷地面積 :330.58㎡
  • 延床面積 :152.54㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :札建工業株式会社
  • 竣  工 :2006年

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