ローコストの家

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

「五稜郭公園にほど近い住宅地で、敷地の形はいわゆる旗竿敷地です。建主は、冬の寒さに対処して、暖かく暮らせる家。メンテナンスが楽で、耐久性があり長持ちする家、などがご希望でした。それに対して私たちが提案したのは、旗竿敷地の袋小路の奥という条件から、周囲からのプライバシーの確保を十分に配慮しながら、既存の庭をそのまま生かし、冬場の太陽光の受け入れ方人と車の出入りの仕方に工夫をした結果、二つの立方体をややずらして合体させるプランにしました。そうすることで、1、2階の居間の採光を十分なものにすることができました。」

以上は、私が20数年前に、外断熱工法と3重ガラス木サッシで省エネ性を獲得したコンクリートブロック造の家、というタイトルで某建築雑誌に寄稿した解説です。

続けてクライアントの本音を「壁はコンクリートブロック、天井はコンクリートのむき出しです。ローコスト化のため外壁材がそのまま仕上げ材になりました。これなら古くならずに、また張替などの必要がないと設計者に説得されたのですが、やはり壁天井が木張りの浴室に入るとほっとします。」

コンクリートブロックのインテリアに戸惑う様子を巧みに編集者が引き出しています。今回、20数年前の事例を再録する作業から多くのことを学びました。 現在、コンクリートブロック造住宅はローコストではなくなったといわれています。しかし、ここでいうコストとは建設時にかかる費用のことで、住んでから必要な、メンテナンス費用などを総合的に評価するライフサイクルコストのことではありません。そして構造性能や遮音性能、そして防火性能など基本的な価値と共にコンクリートブロック造建築の「ほっとする空間」を見出すデザインが重要と考えています。

田家町(たやちょう)の家  詳細情報

  • 所   在 :北海道函館市
  • 構造・規模 :補強コンクリートブロック造、2階建
  • 敷地面積 :197.7㎡
  • 延床面積 :168.2㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :株式会社鈴木事業所
  • 竣  工 :1992年
  • 撮   影 :半村隆嗣

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