共同住宅をブロックでつくる

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

沖縄を例外として全国的にコンクリートブロック造住宅が見られなくなって久しい。需要がなくなったのか、そもそも誇るべき利点がないのか。建設現場での廃材がほとんどなく、規格化され品質管理が容易で、最新の設備投資も必要ない工場で生産されるコンクリートブロックなのだが、住宅建設シーンではめったにお目にかかることがない。   

私は、30年ほど前にコンクリートブロック造の共同住宅を設計して自らそこに住んだ。後に設計事務所さえその一角に併設している。そのせいで、打合せの相手は否応なしにコンクリートブロック造を見せつけられるのである。その影響もあり、年に1~2件のペースでコンクリートブロック造を設計監理する機会に恵まれている。その成果を毎年、建築学会北海道支部が開催する作品発表会に公的記録の意味で発表してきた。数年前のこと、全国的に見ても先駆的な試みというので、中央のメディアで著名な編集者が参加しコメントを寄せた、「15年ほど前に来たときは、北海道といえばコンクリートブロックの家ばかりであったが、最近はスマートな中央に引けを取らない住宅が増えた」というのである。

このコメントは、実に北海道の現状を表している。木造住宅の温熱環境の研究が急速に進み、また地場の建設業の努力もあり工法普及に成功することで、外観上さまざまな意匠が可能になったのである。木造住宅の外観はむしろ均一化してきたのであり、スマートではあるが、モノとして私の心に訴えかけてこないのである。 今回の住宅は、かく言う私の仕事場兼住居である。3世帯の意向を踏まえて、それぞれ独立したスペースを持つ共同住宅として計画された。コンクリートブロックの素材感が木造住宅の町並みの中で独特の存在感を得ている。

SHINKOTONI-HOUSING  詳細情報

  • 所   在 :北海道札幌市
  • 構造・規模 :補強コンクリートブロック造、2階建
  • 敷地面積 :269.68㎡
  • 延床面積 :319.60㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :株式会社松田工務店
  • 竣  工 :1985年
  • 撮   影 :安達 治

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