冬期養生
設計/山之内裕一・山之内建築研究所
前回レポートでは、ブロック積のキモは鉄筋にあることを報告した。今回は、寒冷地特有の冬期養生についてレポートする。
数年前、ある建築設計での話。いざ施工者見積を集めたところ、発注予算を大幅に超過した。予算は増えない。工事は冬期の雪深い時期に行われるため、採暖費や上屋仮設費、および除雪費などが計上されている。いわゆる冬期養生費。積雪寒冷な季節だけの特別なものだ。何のことはない、着工時期を調整することで大幅減額できると確信した私は発注者に進言し、予算超過の危機を無事乗り切ることができた。
前置きが長くなったが、通年施工が普通となった北海道。しかし冬期間の施工にはさまざまなリスクが伴う。コンクリートブロック造の基礎・スラブ・臥梁は、鉄筋コンクリート造そのものだから、季節により温度管理が重要である。今回「カスタマイズできる家」のように地方の小さな建築現場は、ほぼローテクである。そして職人さんの平均年齢が高い。冬場この季節、こうした経験豊富な人材がこの土地の微気象を読んで、コンクリート打設までの工程表を微調整する。ブロック積の作業中は、常にジェットヒーター採暖での温度管理。ブロック積に充填する現場練りプレミックスモルタルや臥梁・基礎の打設コンクリートが正常に硬化するまで温度管理している。今回、建築環境専門の東京大学准教授・前真之さんに打設直後の現場を視察していただいた。これが噂の採暖養生ですねと笑顔。しかし、大量の灯油を消費し熱風を作るジェットヒーターをサーモカメラで狙う眼は鋭い。いつまでもこうした非経済的でエネルギー浪費的養生手法が続くとは考えられないが、現代の有効な技術をうまく活用した手法の変革により、町場の建設現場が長続きできることを期待している。
カスタマイズできる家 詳細情報
- 所 在 :北海道南幌町
- 構造・規模 :補強CB造および木造、平屋
- 敷地面積 :337.80㎡
- 延床面積 :115.93㎡
- 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
- 施 工 :晃和住宅
- ブロック施工:よねざわ工業
- 設 計 :2017年
- 竣 工 :2018年5月予定(本紙平成29年11月20日発行第2964号、および平成30年2月26日発行第2977号参照)