住まい再訪

山之内裕一・山之内建築研究所

近日中、20数年前に設計した補強コンクリートブロック造住宅を再訪する機会がある。記憶をたどると真っ先に想いだす事がある。施主のお父様が作ったというコンクリートブロック敷石平板が数枚、玄関アプローチ床に敷き詰められていた。自家製の割に精度よく驚いたが、なによりコンクリートブロックに寄せる施主の愛情を強く感じた。そのとき施主はコンクリートブロック造住宅のすべてを受け入れたのだ、と確信したのである。

だから、この幸せな住宅再訪を楽しみにしている。そして、建築は長い時間のなかで現在をどのように生きているのだろうか、私なりに検証をしたい。早速、当時の解説文を読み返しながら、設計意図の有効性を問い直した。はじめに、居間を住宅の中心として位置付けた。これは北海道の住様式として、室内に外部活動を取り込む必要性を今も常に考えている。つぎに、天井高4.6mの大開口部に高性能でかつメンテナンス塗装不要なアルミクラッド木製サッシを採用。居間の屋外らしさを演出するため、気積と高断熱性能を必要とした。さらに、暮らしのアクセントで施主に合わせた特注家具をしつらえた。もちろん、躯体はコンクリートブロック外断熱二重壁工法とし、暖房は温水パネルヒーターによる躯体蓄熱を期待した。

当時の北海道は、コンクリートブロック造住宅は時代精神そのものだ。いわば政治・経済・文化すべてのトップランナー工法として、私たち建築家をはじめとする施主・工務店などの関係者がコンクリートブロック造一択の時代だったのである。 訪れる日が近づくにつれて期待と不安が交錯しているのだが、いざ建築と対面するとあれこれ考えていたことなどすっかり忘れてしまうのだ。

蘭東の家(らんとうのいえ)

  • 所   在:北海道室蘭市知利別町
  • 構 造 規 模:補強コンクリートブロック造、2階建
  • 延 床 面 積:144.50㎡
  • 竣    工:2001年
  • 設 計 監 理:山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施  工:須藤建設㈱
  • 撮 影:半村隆嗣

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