古い北海道の民家

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

このところコンクリートブロック造の見直しが国際的な枠組みで進められている。私は先月、日本建築学会の建築会館にて開催されたシンポジウムに参加した。そこで、寒冷地北海道で展開しているブロック造住宅を紹介する機会をいただいた。オンラインで沖縄・大阪・札幌と東京が中継された。地域がつながり、それぞれの歴史がシームレスに過去から現在そして未来に連続しているのを実感した。以前「民家というのはその地方の気候風土にぴったり合って住みやすく、だれでもつくれてしかも形が洗練されている庶民住宅のことである。(足達富士夫)」という定義を引き合いに、三角屋根コンクリートブロック住宅が北海道の民家だと述べた。しかし、それ以前にも民家がある。先のシンポジウムで有意義な提言を拝聴しながら、ふと古い北海道の漁家住宅を思い出していた。北海道の日本海沿岸で明治初期以降に主に肥料の原料とされたニシン、その漁師たちの番屋である。5年前に改修設計にかかわった積丹町のニシン番屋がある。番屋は網元と船頭・漁夫たちの住まいと作業場であるが、付随して石の外壁をまとった倉庫がある。木骨石造と呼ばれ、木造軸組み構造で石の外壁と屋根を支えている。外壁は、150㎜厚程度の加工しやすい石材が積層されている。石材は、倒れこみを防ぐため木造躯体と鉄製カスガイで緊結されている。麻ひもで緊結された例もある。軒高5m以上に積み上げられた内部空間は実に素晴らしく感動的だ。ここにも過去の組積の技術が生かされているのである。

ヤマシメ福井邸石造倉庫  詳細情報

  • 建物名称 :ヤマシメ福井邸石造倉庫
  • 所  在 :北海道積丹町美国町(しゃこたんちょうびくにちょう)
  • 構造規模 :木造2階建
  • 建築面積 :128.96㎡(推定値)
  • 設  計 :不明
  • 竣  工 :大正初期
  • 図  版:山之内建築研究所

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