CB建築の講義・その2

山之内裕一・山之内建築研究所

今回は、私たち人間が建築空間をどう受け止めているか、の考察です。前回、シェルター規模の大小で人の心に響くものが異なることを述べました。ここでは、もう少し具体的に考えます。

大きなシェルターに天井ガラス屋根と透光性外壁から柔らかい光が注いでいます。視線の先で動く人々の影の重なりに、心が動きます。他方、小さな部屋は私ひとりの場所、目を閉じると心は徐々に静まるのです。心が動き静まる事とは、空間知覚の別名であり、人の心に響く大切なものです。それをここでは空気感と呼びます。一般的に視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚を五感と言います。代表格が視覚です。空気感は五感を総動員して構築される体系的な感覚であり、だからこそ全身の感覚を研ぎ澄まして受け止めるのです。そして、良い空気感に接する機会が増すごとに、わずかな違いを認識することが可能になります。

私たちは、みる・きく・かぐ・さわる・あじわうという五感で知覚される多くの情報を瞬時にしかも体系的にとらえ、建築空間を受け止めています。なかでも魅力的で心地よい情報は有用な空間体験として記憶され広く共有されると、共通の美意識がつくられる。やがてそれは建築文化へ向かう。

私たちは、長い歴史の中で建築空間の知覚構造を理解してきました。同時に建築空間の法則を設計行為とともに発明・発見しました。次回は、そうした建築空間の法則について考えたい。

  • 八窓庵~茶室の静けさ 窓が8つある二畳台目の茶室、床座が私的な視点をつくる。                 所在:北海道札幌市中央区                                           撮影:山之内建築研究所
  • NY証券取引所~布素材の柔らかさ 堅い石材外壁と布素材の国旗、感触と視覚が対比をつくる             所在:米国NY                                                 撮影:山之内建築研究所
  • 沈床園(イサムノグチ:1964年)~都市騒音を消す地下の銀行受付けのための水庭。噴水音で都市の喧騒を忘れる。     所在:米国NY                                                 撮影:山之内建築研究所
  • 札幌市立中央図書館アトリウム(1990年)~光の地と図 外部が室内より明るい現象、地と図の視覚逆転が起こる。    所在:札幌市中央区                                              撮影:並木博夫

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