CB建築の講義・その8~パストラルタウン

山之内裕一・山之内建築研究所

毎年12月、日本建築学会北海道支部では建築作品の発表会を開催している。昨年末、ある発表が気になった。発表者の建築家・圓山彬雄氏は、「大手ゼネコンがディベロッパーとなり、当時30~40代だった4名の建築家が挑戦した建売住宅。個々の住宅は、建築家の主張をこめた個性を持ちながらも、集合体として個性的な街並みを形成させることを目的とした。」と語る。そして36年後の夏に再訪し、すっかり落ち着いた街並みに成熟した姿を見て次のように述懐している。「形態的なコンセプトを守りながら、改修、維持管理されてきた結果であり、住み続ける人たちのおかげであり、地区の財産となった。」

発表会の数日後、私も現地に向かった。到着すると、個々の主張を強烈に感じる住宅群が目に飛び込んでくる。そこには40年近い歳月が、熟成された味わい深い街並みがある。当時の開発者たちが夢見たパストラルタウン(田園都市)というネーミングにふさわしい街並みが目の前にある。この愛すべき景観は、なにより住まい手たちが費やしてきた長い時間の成果なのだと思う。

私は、数軒のコンクリートブロック住宅に目を奪われた。あくまでも仮説だが、1980年代の北海道の若い建築家たちには、コンクリートブロック建築を設計することが通過儀礼のような雰囲気があった。この個性的な街並みの中で、コンクリートブロック住宅の景観形成に果たす役割は大きく、魅力を説くカギとなっているかのようだ。住宅群からの帰路、今年もまたコンクリートブロックの話をしたいと考えた。

パストラルタウン美しが丘  詳細情報

  • 所   在 :北海道札幌市清田区美しが丘
  • 設 計 者 :倉本龍彦、小室雅伸、圓山彬雄、宮下勇、+清水建設北海道支店
  • 用 途 :戸建分譲住宅(24戸~1986年当時)
  • 竣   工 :1986年
  • 撮   影 :山之内建築研究所(2023年)
  • 文献引用 :北海道建築作品発表会作品集VOL-43

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