住み継がれる幸運な住宅
山之内裕一・山之内建築研究所
竣工18年目の「美しが丘の家(2006年)」に思いがけず改修設計の機会が訪れた。若いカップルが新しい施主になり、既存住宅が住み継がれることになったのだ。初めに外壁まわりと開口部を点検修理、次に耐用年数が過ぎた設備機器を更新。その過程で既存住宅は時間経過による大きな変化もなく、満足できる機能と性能が維持されている躯体だと再確認して一息ついた。そして、新しい施主が気に入ったというコンクリートブロックの躯体と対話するかのように、つぎつぎと気の利いた家具などが持ち込まれ見事に変貌する室内空間を目にして嬉しくなった。彼らが空間の使い方を心得ている家具コレクターだと分かったのはしばらく経ってからだった。
そうした施主との出会いから2年をかけた対話を重ね、約10坪程の半戸外カーポートを室内化する多目的利用可能な風除室をつくることになった。改修方針は、全ての開口部を閉じ外壁をつくること、なかでも前面道路側の最大開口が重要だ。具体的な提案は、フロスト加工された190mm角ガラスブロックを用いて幅4800mm×高さ2200mmの透光不透視壁をつくり、玄関扉建具と並置させ閉じる。透光不透視ガラスブロック壁は、遮音性能があり静かで、すりガラス同様に明るい。一定の断熱性能を有し、プライバシーを保ちつつ、太陽光など外部の様子を細やかに室内へ伝えてくれる多機能な優れた素材である。 今回幸運にも、新しい施主による改修を経て、住み継がれることになった。コンクリートブロックの躯体だからこそ、多様な室内空間へ変貌できたのだと思っている。
美しが丘の家・改修
- 所 在:北海道札幌市清田区美しが丘
- 構 造 規 模:補強コンクリートブロック造一部木造、2階建
- 延 床 面 積:185.02㎡
- 設 計 監 理:山之内建築研究所/山之内裕一
- 施 工:エムイー・ワイ株式会社/目黒康雄 札建工業株式会社(既存2006年)
- ガラスブロック:日本電気硝子(株式会社クワザワ)
- コンクリートブロック:よねざわ工業
- 撮 影:佐々木育弥
週刊ブロック通信の購読申し込み
「コンクリート製品業界に関連するするニュースをいち早く・幅広く」お手元に届けることを心がけ、「週刊ブロック通信を読めば、この一週間の業界の動きが全て分かる」紙面づくりを目指しています。