換気を意識した住宅

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

「この家では電源が切れると何時間生きていられますか?」クライアントからの質問であった。高気密で隙間の無い仕様だから、もしもの時は空気がどのくらいあるのか、その時間に見合う蓄電池が必要ではないのかという問かけであった。躯体が気密であること、そして換気は24時間計画的になされていることを説明した後だった。まあ現実の住空間では窓やドアなど開口部に生じるわずかばかりの隙間から空気は入ってくる。まして息苦しくなれば自力で窓を開けさえすればいいだけの話である。

では、いったい現在の住宅は、なぜこのように気密空間を指向するようになったのだろう。話は20数年前にさかのぼる。それまでのコンクリートブロック造は断熱や蓄熱また構造的な優位性を武器としていた。また室内環境の悪化を防ぐシックハウスへの対応が住宅全般に求められた。それが計画換気の理念である。計画換気は物理的に気密性の高い建築を前提としている。躯体はコンクリートブロック、サッシは高断熱トリプルガラス入りの木製である。暖房はパネルヒーターによる温水暖房。それに換気システムを組み込む。そうして計画したのが今回の住宅だった。新鮮空気をできるだけ窓下のパネルヒーターに近い位置から取り込む。外気の寒さを和らげるためだ。排気は各室に設置した排気口から取り込みダクトを通して集め強力な排気ファンで屋外に排出。排気口の絞りの開度を調整することで均等な排気風量を作る。というシンプルなシステム。そのためには、自由にランダムに出入りする余計な空気は邪魔なのである。これで、一時間に部屋の半分の空気が自動的に入れ替わる換気回数0.5回となる。私が換気の重要性を認識した瞬間だった。もともと断熱性能の高かったコンクリートブロック外断熱工法であったが、この後さらに省エネルギーの観点からのさまざまな工夫や改善が行われているのだが、それは次の機会としたい。

東苗穂の家  詳細情報

  • 所   在 :北海道札幌市
  • 構造・規模 :補強CB造一部木造、2階建
  • 敷地面積 :250.24㎡
  • 延床面積 :167.42㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :晃和住宅株式会社 (第三種計画換気)ジェイベック株式会社、(温水暖房ピーエス株式会社
  • 竣  工 :1997年

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