ブロックの教会堂
設計/山之内裕一・山之内建築研究所
大正から昭和にかけて、独自に開発した型枠ブロックを用いて全国に多くの建築を残した建築家・中村鎮(なかむらまもる)の手になる教会堂が都内にある。大正10年の函館大火の復興を防火建築の観点から支えた「鎮ブロック(ちんぶろっく)」で躯体が作られている。当時、中村鎮自身が函館に赴き建設に当たっていることから北海道と深い縁がある。ブロックと北海道、これは一度見ておかなくてはならない。念願の見学が実現したのは9月の中旬、小雨降る午後だった。東京都文京区本郷の弓町本郷教会で関東大震災後に建築されている。外観は、落ち着いたベージュのタイルと石で構成されており、重厚な印象。いかにも防火耐震建築といった風情だ。教会関係者の案内で室内へ。内部は白い漆喰またはモルタル壁。100年近い歴史を感じさせるステンドグラスや装飾、そして左右シンメトリーに配されたパイプオルガン、グランドピアノもあり、まるでコンサートホールのよう。高い天井が大きな気積を作りクラシック音楽の演奏には欠かせない十分な残響時間を約束している。また遮音性も期待でき、都会の喧騒を忘れさせる静けさに満たされている。ただし私の関心は鎮ブロックと呼ばれる型枠ブロックにあるのだが、表面の仕上げに隠されてどこを探しても見ることができない。そうした建築見学者の気持ちを察してか、教会配布パンフレットに設計者そして鎮ブロックが明記され建築の歴史を丁寧に伝えているのである。
日本基督教団弓町本郷教会 詳細情報
- 所 在 :東京都文京区本郷2-35-14
- 構造・規模 :RC造地上4階建
- 敷地面積 :1,344㎡
- 竣 工 :1920年代
- 設 計 :中村鎮
- 写真提供 :山之内建築研究所
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