古くて新しい素材
設計/山之内裕一・山之内建築研究所
石やレンガほど古い建築材料ではないが、今、普通のコンクリートを新しい素材とは呼ばない。コンクリートブロックもまた古く長い歴史を持っている。第二次世界大戦後の北海道に限っても、「防寒住宅」、「外断熱ブロック住宅」、といった大きな節目の歴史があった。前述の「防寒住宅(1953年/寒地住宅促進法)」については、当時の木造一般住宅(寒い北風が家の中に入り込む北海道では厳しい住環境であった)の欠点を気密性が優れたコンクリートブロック積壁が補ってくれただろうことは想像できる。当時、これといった断熱材は全く備えられていない。時は過ぎ、20数年後(今から30数年前)躯体コンクリートブロック外側に様々な種類の断熱材を備えた、「外断熱ブロック住宅(1970~80年代)」が登場した。ブロックは構造体であり、蓄熱体でもある。そうしたブロック素材としての利点を最大限に表現する二重積ブロックが幅を利かせる時代であった。断熱に優れ蓄熱性が期待できる住宅が完成することが周知となった。しかし、現在コンクリートブロック住宅の新築現場は、皆無といっていい状況だ。この30年の間にどのような変化が生じたのだろう。今回、南幌町に完成した「カスタマイズできる家」は、そうした状況下で試みた。私は、あえて外観ではコンクリートブロックを表現せず、室内で蓄熱、蓄冷効果を生み出す新しい素材として位置付けた。今年ひと夏を経過し、真夏日の急激な外気温上昇にも、夜間の蓄冷効果(ナイトパージ)が有効に作用していることが確認できた。
ナイトパージには、夜間も安全に開放できる特注のガラリ窓付き木製断熱サッシが役立つ。コンクリートブロックは、無冷房で快適に過ごすことができる「古くて新しい素材」なのである。
カスタマイズできる家(第4回日本エコハウス大賞優秀賞) 詳細情報
- 所 在 :北海道南幌町(なんぽろちょう)
- 構造・規模 :補強CB造、および木造、平屋
- 敷地面積 :337.80㎡
- 延床面積 :115.93㎡
- 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
- 施 工 :晃和住宅
- ブロック施工:よねざわ工業
- 木製サッシ :札幌ベニヤ商会m.a.p事業部
- 設 計 :2017年
- 竣 工 :2018年5月
- 温熱性能 :Ua値0.23w/(㎡・k) C値0.4㎠/㎡