再生ガラス骨材の現状と将来展望 タイガーマシン製作所、北原会長に聞く2 

タイガーマシン製作所(本社、岡山県高梁市落合町阿部、社長=北原剛正氏)が、廃棄太陽光パネルリサイクルに力を入れている。廃ガラスを再生骨材として再利用する取り組みで、各地で骨材不足が課題となっているコンクリート製品業界にとっても関連が深い。

前回は国内の骨材事情と、舗装コンクリートブロック研究会(CPI)の設立経緯について話を聞いた。今回は舗装ブロック市場の将来展望を中心に、同社の北原哲五郎会長に話を聞く。

●舗装ブロックに未来はある! 

―― 大量の廃棄ガラスを有効活用するため、舗装コンクリートブロック研究会(CPI)を設立したということですが、なぜ舗装ブロックで再生ガラス使用推進を始めることにしたのでしょうか

北原 弊社がアメリカや中国、韓国に顧客を持ち、舗装ブロックが各国で大量に使われているのを知っているというのが、一つの理由です。アメリカの個人オーナー会社としては最大のケンブリッジは、今6番目の弊社のプラントを設置中です。来年3月ごろ稼働しますが、昨年の舗装ブロックの生産は400万㎡を超えています。韓国は国土も人口も日本の約半分ですが、舗装ブロック生産高は3000万㎡以上。ドイツの技術で舗装ブロックに取り組み始めたのは日本と同時期です。それがなぜ日本では300万㎡、一人あたりに換算すると韓国の20分の1でしかないのでしょう。 「何だ、これは!」「日本でも、もっとやれるだろう!」というのが正直な思いです。300万㎡は少な過ぎで、舗装ブロックはまだこれからだと思うので、挑戦しようとしているのです。弊社は需要拡大の方策として「大型化」「機械化」を提唱してきましたが、今回SDGs、脱炭素に貢献する「再生骨材」を加えてチャレンジします。従来のいわゆるインターロッキングブロック(ほぼエクステリア用)とは別に、視点を変えて舗装市場を見たり、コンクリート舗装の良さを探して営業上の強みにしたり、という作業を想定しています。現在のLCA(ライフサイクルアセスメント)を重要視する流れの中では、コンクリート舗装は優れものであり、コンクリートブロック舗装は現場打設の舗装よりさらに優れていると自信をもって言えます。課題は、そのブロック舗装の良さをどう定量的に示しユーザーに理解してもらうか、また路盤を含むトータルの舗装技術をどう確立してユーザーに訴えていくか、だと思います。これは、舗装に関係する皆さん全員の総力を集め、資金を集め、時間をかけて実験施工をやるぐらいの覚悟がなければ難しいでしょう。

 もう一つの理由は、日本の舗装ブロックメーカーは40社と少なく、そのうち30社は弊社のお客様なので、これからガラス骨材を使用したブロックの製造技術や品質管理の確立、そして営業ツールの作成などに取り組むチームを作りやすい、意見集約しやすい、と判断したためです。6月に弊社のお客様30社にメールで呼びかけ、賛同して一緒にやろうと返信していただいた方でCPIを設立して活動を始めています。弊社はブロックメーカーではありませんが、CPI会員がCPIで得られた知見や脱炭素などの成果を事業に活かすことを支援することはできます。いずれCPI会員が中心となって再生骨材を使うブロックメーカーが増え、ガラスの大量廃棄という社会問題の解決にブロック業界が大いに貢献できると思うだけでワクワクしますね。その時舗装ブロック業界は活性化しているに違いありません。

実は、皆さんもご存じのように、ゼネコンを始めいくつもの企業が脱炭素を目指してCO2を吸収するコンクリートや、バインダーをセメントから高炉スラグ微粉末やフライアッシュに置き換えたコンクリートの開発を進めています。弊社が参画し共同研究しているケースもあります。そういった企業は、その実験にほとんど舗装ブロックを利用しています。つまり、最初に脱炭素に取り組むなら舗装ブロックだ、と彼らは思っているのではないでしょうか。皆さんも大阪万博でそういった製品を見かけることになるかもしれません。

―― 今後のCPIの方針はどうなっていますか

北原 CPIの活動指針は、廃棄物由来の再生骨材の活用を推進する―です。その第1弾としてガラス、特に太陽光パネルの表面ガラスで作られる再生骨材を取り上げた、ということです。ガラス骨材が軌道にのれば、次の廃棄物を対象にして活動を続けます。すでに、フライアッシュや製鉄所の廃棄物の処理などで実績がありますが、これをもっと広げたいと思っています。また、再生骨材の用途に、近い将来建築用や土木用ブロックも加えます。

●目指すは「市場」拡大

―― 最後にお聞きしますが、CPIのような顧客支援活動の狙いはどこにありますか

北原 私は、この業界に入って50年以上、空洞ブロック業界の団体に参加しだして48年にもなります。空洞ブロックメーカーは50年前には6000社以上ありましたが、現在では150社以下にまで激減しました。舗装ブロック業界も土木ブロック業界も、同じように大きく縮小してきました。縮小する市場での競争はいずれ生き残りをかけたシェアの奪い合い、激しい価格競争に行きつき、事業継続を難しいものにします。お客様の業界が疲弊してしまえば、いくら良い機械を開発しても機械は売れず、タイガーの国内事業も成り立ちません。だから、「市場拡大」が私とタイガーグループの最大の関心事であり、最大の努力目標です。CPIの存在は「市場拡大」に必ず役に立ちます。

 私がいう「市場」とは、「コンクリート製品成形機でできるすべての製品の市場」であり、コンクリートブロックや製品だけを対象にしているものではありません。タイガーの成形機は、すでに日本でもアメリカでも中国でも台湾でも、コンクリート製品以外の製品製造に使用されています。コンクリートブロックも、舗装用、建築用、土木用などに限らず、たくさんの用途にマッチした製品があるはずです。また、原料を変え、モールドを変え、作り方を変えれば、コンクリートブロック以外の市場にも参入できます。一つの殻、例えば「空洞ブロックという殻」に閉じこもっていてはチャンスが見えないこともあります。「成形機」を文字通り解釈して活用してください。「振動締固めの技術」は素晴らしい、形にできるものはなんでも形にできるんだ、という視点を持てば、皆さんの周りにやれることがあると思います。

―― ありがとうございました。「脱炭素」がこれだけ叫ばれている時に、コンクリートが大きく貢献できることを知り、大変うれしく思います。機会があれば、次は御社にとっても弊紙にとっても祖業である、空洞ブロック業界の将来を北原会長がどう見ておられるのか、ぜひお聞きしたいです。

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