原点回帰のコンクリートブロック住宅
山之内裕一・山之内建築研究所
40年前、私はコンクリートブロック二重壁構造の住宅を自邸として設計しました。以来、自宅兼事務所として使いつつ住み続けています。昨年、建築専門誌「住宅特集(新建築)2025年09月号」は、建築家の自邸を特集しています。巻末の特集記事「建築家自邸学1985-2025」は、40年間に発表された建築家自邸414作品を調査対象とする研究論考です。そのなかで、執筆者の九州大学准教授・岩元真明氏は研究の意義を「現在へと繋がる住まいの可能性を探る」と述べています。私の自邸「SHINKOTONI HOUSING」も調査対象のひとつとして取り上げられました。私は膨大な資料を読み解いた研究に敬意を払うとともに、その分析や論考に当事者としての関心があります。そして、あらためて私自身が自邸を再考する機会を与えてくれたことに感謝しているのです。さて、論考では5つにカテゴリー分類され、そのひとつに「地球と生きる」10作品があります。そこには、全国各地のほか北海道、富山、秋田、沖縄の地域に建つ住宅が含まれ、なかでも「個性ある環境と向きあう」5作品の一つに位置付けられているのが私の自邸です。 あらためて私自身による自邸の解説「住宅特集(新建築)1986年12月号」を再読することにしました。はじめに敷地環境について、当時スプロールが拡がる住宅地にみられる無性格で曖昧な風景の印象を批判的にとらえ、設計する住宅は明確な性格を持つべきだと宣言。つぎに配置構成として、敷地の1/4を堆雪用中庭として残し、3/4に住宅を建築。特に北側隣家への日照確保を配慮して分節した水まわりを低くおさえました。新参者として、地域への作法を建築的に表現したのです。最後に、コンクリートブロックへ言及しています。半年間雪に閉ざされる北海道の住宅は室内での多様な生活を可能にするものでありたい、そのためにコンクリートブロックの頼れる壁が必要だとしています。コンクリートブロック二重壁の空気層と断熱材を挟み込む390mmの分厚い壁は、そうした条件を十分備えているとも記しています。もちろん現在は、40年の時間のなかで、建築としてさまざまな微調整を経ていますが「地元工場でつくり、経験豊かな職人が積むコンクリートブロック壁が私は好きだ」と新築当時声高に叫んでいるのは、単なるコンクリートブロックへの感情を越え、今に繋がる地域のアイデンティティと尊厳を吐露したものだと考えています。
詳細情報
作品名:SHINKOTONI-HOUSING(シンコトニ ハウジング)
所 在:北海道札幌市北区
構造・規模:補強コンクリートブロック造、2階建
敷地面積:269.68㎡
延床面積:319.60㎡
竣 工:1985年
設計監理:山之内建築研究所/山之内裕一
施 工:(株)松田工務店
撮 影:安達 治
雑誌掲載:新建築住宅特集(1986.12)、新建築住宅特集(2025.09)






