藻岩下の家(もいわしたのいえ)

四角いブロックをまるく積む。

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

コンクリートブロック造に関わって30年近くになる。自邸を含む共同住宅の設計がスタートだった。後日、その共同住宅の一画に設計事務所を構えることになり、コンクリートブロックのある風景が私の日常になっている。しかし、この30年で状況は一変した。ローコスト高性能住宅の代名詞だったコンクリートブロック住宅は、私の住む北海道においても今や新築現場を見ることが少なくなった。今回、紙面をいただき数回にわたってコンクリートブロック住宅の魅力を伝えたいと考えている。

第一回目は、ミニマムな円形平面に挑戦した住宅をご紹介する。

札幌市の藻岩山は原始の記憶を残している原生林で、現在も緑は保存されて、圧倒的な自然の姿を見せている。その自然の一部を建築に置き換えていく。建築は、時間を記憶する新たな人工物として生きていかなければならない。平面は、2重積みしたコンクリートブロックの外壁が円形に囲いとる。北斜面の敷地で日照不足の心配があること、冬期間は2メートルもの積雪があり、春には春には相当量の雪解け水が発生するため、それらに対し有効な平面形態を採用することとなった。そこで採用されたのが円形だった。円形の外壁にはまんべんなく陽が当たり、水の抵抗も少なく、構造上も安定する。住宅内部の断面構成は、居間・玄関・主寝室の3つの異なったフロアレベルが、敷地の高低差にしたがって連続している。ワンルームに近い単純な構成にもかかわらず、迷路のような複雑さを生んでいる。

藻岩下の家は、半径7メートルの円周上に断熱材をはさんで2重積みしたコンクリートブロックの壁をつくり、その400ミリの厚い壁をフラットスラブが上下にはさむようにしてできた住宅だ。当時飼っていた猫の歩きやすさを考慮して床の素材を検討したあげく、床暖房を施したコンクリート床のままでいくことに落ち着いた。その結果、床天井とも同じコンクリートスラブとなり、上下反転しても気づかないくらいのシンプルなインテリアが実現している。厚い壁、床暖房の床、外断熱された天井は、北海道の積雪寒冷地の風土がつくった独自のカタチにほかならない。

藻岩下の家(もいわしたのいえ)詳細情報

  • 作品名:藻岩下の家(もいわしたのいえ)
  • 所 在:北海道札幌市南区藻岩下
  • 構造・規模:補強コンクリートブロック造、2階建
  • 敷地面積:991.53㎡
  • 延床面積:218.56㎡
  • 竣  工:1996年
  • 設計監理:山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施  工:沼田建設
  • 撮  影:安達 治

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