ブロックと軟石で家並みをつくる

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

第二回目は、昨年末に竣工し、ちょうど一年を経過した住宅を紹介する。明治の開拓から始まった北海道の住宅の歴史は、本州からの和風の移入と北海道開拓使が北米から招き入れた洋風の技術とデザインによって基礎が形づくられてきた。

現在、札幌市内で古い石造倉庫などの外壁に使われている札幌軟石は、その時代に発見された素材である。住宅の外装材にはなかなか適当な建材を見つけることが難しい。ブロックや軟石はそうした悩みに答えを与えてくれた。

若いカップルの住宅である。敷地は、札幌市の郊外で、整然と区画割された丘陵地に位置している。周囲は自然豊かで白樺林などが続いているが、数年前に開発されたばかりで住宅地としての密度感に乏しく、街並みの風情はあまり感じられない。また、ほぼ均等な面積に分けられた周辺敷地にパラシュート降下のように次々と出現する商品化住宅は、単体住宅の繰返しでしかなく、街並み景観など多くを期待するには無理がある。そこで単体住宅としてではなく、群としての住宅を最初から作れないだろうかと考えた。かつて、北米で数世代をかけてつくられた農村住宅のように、世代とともに増築を繰り返し、時間を重ねて一つの群となり風景を作る。群体の住宅である。

具体的には、外断熱の住居棟と非断熱の車庫棟それをつなぐ渡り廊下棟の3つに分けた。それぞれは小屋のようなスケール感を保つように計画している。若いクライアントにとって長い時間を過ごすために、住宅は長持ちする必要がある。したがって、時間とともに愛着が増すような、いわば本物の素材を選択する必要がある。偶然、敷地近くには札幌軟石の採掘場があり外装材として採用した。

構造体を構成するコンクリートブロック造もまたいつまでも耐久性のある素材工法であり、長持ちするという観点から選択された。小屋群住居は、長く住み続けられる街並みを誘発する最小単位の住宅として考えている。歴史を封印した群体形式の住宅もまた北海道の風土がつくるカタチに他ならない。

小屋群住居K  詳細情報

  • 所   在 :北海道札幌市南区真駒内
  • 構造・規模 :補強コンクリートブロック造一部木造、2階建
  • 敷地面積 :340.67㎡
  • 延床面積 :128.62㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :岩田住宅商事
  • 竣  工 :2012年
  • 撮   影 :安達 治

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