ブロックから森をのぞむ

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

第三回目は、四季の変化が明確な北海道の自然を、毎日のように居間から味わうことができる家を紹介する。北海道といえば、広大な自然景観がイメージの代表格であろう。遮るもののない地平線、地球の丸みを実感できる水平線に息を呑むのは観光客だけではない。道産子の私たち住民も同様である。願わくば、居間から望む景観はそうした北海道らしさに満たされていたい。

敷地は、札幌市の真駒内柏丘(まこまないかしわおか)という自然に恵まれた丘陵地の一画にある。1972年の札幌冬季オリンピックを契機に整備された住宅地である。当時は、一区画300坪程度の比較的大きな敷地だったが、近年、細分化の傾向にある。今回の敷地もまたそうした経緯で生まれた敷地である。しかし良質な住宅地であることに変わりなく、特に今回の敷地は南斜面に森の木々を見下ろすまたとない景観が得られる場所である。最初に敷地を訪れた時、私は眼下に広がる木々の緑に心を奪われた。ここでは、この景観を最大限に取り込むことが建築にできる最大のことだ、と考えた。具体的には、敷地外の森の中に視線の焦点を置き、それを中心点とする円弧上に外壁を立て、居間と食堂および台所を囲いとった。低く抑えた開口部から望む森の景観は、敷地いっぱいに設けたウッドデッキを介して日常的に楽しむことができる。

札幌は自然がいたるところに組み込まれた都市で、敷地の位置する真駒内地区は地下鉄駅から徒歩圏内でありながら、エゾリスやキタキツネなどの小動物、小鳥などが目を楽しませてくれる。建築は、色彩豊かな自然に寄り添い、いわば森の木々の樹皮のように目立たずしかも堅牢にと考えた。

ここではコンクリートブロックのグレイ色が、自然の背景としてふさわしいと思えるのだ。内部床仕上げは、北海道産ニレ材。天井は、北海道南部の噴火湾産のホタテ貝を原料にした漆喰。椅子テーブルを始め、キッチンや食器棚なども全て札幌市内の工場で製作している。家具製作にあたっては、作り手の一人ひとりに自然の背景となる建築の立ち位置を説明した。椅子張りのグレイの市松模様はそうした意識の表れである。家具などがつくる室内風景からも、作り手の顔が鮮明に望めるのである。

グレイの家  詳細情報

  • 所   在 :札幌市南区真駒内柏丘
  • 構   造 :補強コンクリートブロック造、2階建
  • 敷地面積 :292.47㎡
  • 延床面積 :166.44㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :辻野建設
  • 竣  工 :2004年

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