物語を生むブロック

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

今回は、非住宅の海外編。半世紀のあいだ工事が中断され、廃墟同然となっていた建築が突如眠りから覚め、見事に完成した。スペイン・バルセロナの西、古都タラゴナは地中海に面している。タラゴナ市街からさらに数キロ内陸部に入るとモンフェリ―村がある。村の小高い丘に教会堂が建っている。モンフェリ―教会堂は、1926年に建設が開始したものの1930年経済的理由により建設が中断された。以来、半世紀以上も放置され建物は風化していた。しかし、1980年代アントニガウディ研究者でバルセロナ工科大学バセゴダ教授が中心となり工事が再開されると、21世紀目前の1999年に完成した。

そこに至る過程で何があったのか、再始動したのは何故なのか、そもそも設計図面は存在していたのか、私の素朴な疑問は旧知のジュジョール研究者・木下泰男氏との短い会話で徐々に小さくなる。教会堂の設計者はガウディの高弟ジュジョールだからである。私の疑問がすべて消えたわけではないが、バセゴダ教授が中心となり、残されていたスケッチから図面を起こし、当初からの建設素材コンクリートブロックを継承した事実は腑に落ちる。

私は、そこに驚きとともに現代的な意味があると考えている。地域の素材を用い、地域の職人が積む。再建に関わる人々の地域への深い洞察と、幾年もかけられる持続可能な建設システムがあることに驚く。単に新しく物語をつないだだけかもしれないのだが、半世紀の後、新しい物語が始まるときコンクリートブロックは先鋭な技術革新が求められたはずだ。構造技術者の力がなければ、この形態は成立しない。ブロック造などメーソンリー建築にはそうしたふたたび始動する、いわば物語を生む力が込められているのだと思う。

モンフェリーの教会堂  詳細情報

  • 所   在 :スペイン・カタロニア
  • 設   計 :J.Ma ジュジョール
  • 構   造 :コンクリートブロック造
  • 施   工 :1926~1930年中断、1999年完成
  • 撮   影 :山之内裕一(2010年11月)
  • 参   照 :ブロック造の教会堂(本紙:平成28年1月1日号)

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