始まりはレンガ造

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

どのようなことにも初めの一歩があるもので、あれがそうだったのかといつも後から気付くのである。私にとってブロック造の始まりはブロックではなくレンガだった。初めて海外旅行を経験したのが、1975年。旅の行き先は、あこがれのインド亜大陸。旅程の最終盤、当初の予定になかったバングラデシュの首都ダッカに立ち寄ることになった。当時世界中で最貧国のひとつ、度重なる自然災害と独立戦争の後遺症で苦しんでいた。かのビートルズが難民救済コンサートをアメリカで開催したことでも話題になった国だ。全く情報のない時代、ネパール滞在中にバングラデシュ大使館で渡航情報を得た。前の年、1974年に急死したルイスカーンが集大成としてかかわっていた建築を私は見たかった。それはバングラデシュ国会議事堂。建物はレンガ造とコンクリート造の美しく力強い建物群だ。ルイスカーンは全てをコンクリート造で設計したかったのだが、現地に赴きレンガ造を基本にする。そこには地域に対する深い洞察がある。私も旅の初めから幾度となく目に焼き付いていたレンガの風景がある。この地域ではレンガが似合うのだ。古代の仏教遺跡やイスラムの城郭、ヒンズーの寺院などレンガ造建築群行脚は、ダッカのルイスカーンにとどめを刺した。ブロック造を含むメーソンリー建築を私が意識した瞬間だ。3月17日は、ルイスカーンの命日でもある。

バングラデシュ国会議事堂  詳細情報

  • 所   在 :ダッカ(バングラデシュ)
  • 設   計 :ルイス・カーン(1901年~1974年)
  • 施工期間 :1962年~1983年
  • 写   真 :山之内裕一(撮影1975年2月)

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