CB建築の講義・その6

山之内裕一・山之内建築研究所

今回は、住宅が立地する敷地そのものの持つ魅力や役割についての考察です。日本建築学会北海道支部では40年以上前から全国に先駆けて年に一度その年の成果を発表する「建築作品発表会」を開催している。私も自身の定点観測の意味で、今年も札幌市内の住宅を発表する予定です。ノルディックスキーのジャンプ台のある大倉山の麓に位置する住宅で、床面積の半分を無柱のワンルームとして音楽アトリエに利用する。音楽アトリエとは個人的な楽器の練習場というほどの意味で時には仲間たちと合奏し、腕前を披露する場としたい。希望は最大限に膨らみ38帖の広さとなったが工事予算は限られている。費用のかかる設備等は最小限に抑え、空間ボリュームを大きく取りスケールメリットを求めた。結果、市販品の張弦梁トラス採用でリーズナブルに大屋根を構築できた。100坪以上の敷地ではあるが、楽器演奏の音を完全に閉じ込めることはできない。もちろん室内は静かな環境で演奏したい。外壁は遮音性能が求められた。質量の大きい物質ほど遮音される。コンクリートブロック造などでは遮音性能が期待できるが、今回は木造。そもそも音は距離に比例して減衰するので、音源の位置は重要と考え敷地中央に音楽アトリエを配置した。北側は交通量の多い幹線道路で音の伝播を心配したが、風致地区保全された樹木と、10m深の沢が自然の遮音と景観のフィルターとして機能した。改めて敷地の持つ力に魅了されている。

宮の森のトラス  詳細情報

  • 所   在 :北海道札幌市中央区
  • 構造・規模 :木造2階建て
  • 敷 地 面 積 :337.51㎡
  • 延 床 面 積 :119.10㎡
  • 設 計 監 理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 設 計 協 力 :田名部伸紀建築設計事務所
  • 施 工 :小杉建設/小杉信勝
  • ト ラ ス :ATAシステム
  • 設   計 :2021年
  • 竣   工 :2022年1月
  • 撮   影 :佐々木育弥

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