CB建築の講義・その12 二重壁と二重積み
山之内裕一・山之内建築研究所
私も時々混用してしまうことがあるのですが、コンクリートブロック(以下CB)二重積と二重壁について、積みと壁の違いを考えてみたい。北海道の補強CB造は、外断熱と出会うことで、熱容量の大きいCBを生かす寒冷地にふさわしい工法として定着します。工法の仕組みを簡単に説明すると、CB内壁は構造壁、断熱材をその外側に貼り付け、最外部は外装CB壁とする。つまり内外2枚のCB壁で中間断熱材をはさむ厚いCB壁です。
この時、厚いCB壁を強く意識したためCB造二重積と表現されました。CB造はメーソンリー(組積造)だからです。他方、内壁CB壁をそのままに、外装材は自由に選択できるのですから、その場合は、二重壁と呼ぶのが適切です。この工法の先駆者・鈴木憲三氏は「耐久性が高く価格が安いブロックを外装材とした」と述べ、暗に外装材の様々な選択があったことを示唆しています。外装材は、断熱材保護と外観のデザインを決定付ける重要な役割を担っています。さまざまな素材の組合せを予見してCB二重壁工法と命名したのです。そこに外壁素材の多様性やイノベーションを見据えた見識がうかがえると考えています。 一字違いの二重積みに話を戻すと、こちらは外装材がCBと決まっています。CB二重積工法は、内外同素材であり、あたかも単一素材であるかのような印象があります。石造やレンガ造などと同様に、CB建築はメーソンリー建築なのだと意思表明しているようです。つまり外断熱の断熱材を内包したCBのサンドイッチ躯体が想定されていると私は考えています。パッケージされることで物理性能の把握と向上を期待でき可能性を広げることが容易になります。例えば欧米に先例がある、断熱ブロックとして展開することができるのではないかと考えています。二重壁と二重積み、実はスタートラインは全く同じですが、わずか一字違いで見えてくる景色が大きく異なるのです。
真駒内南町の家(まこまないみなみまちのいえ) 詳細情報
- 所 在:北海道札幌市南区真駒内
- 構 造 規 模:補強コンクリートブロック造、2階建
- 敷 地 面 積:327.28㎡
- 延 床 面 積:124.97㎡
- 竣 工:1994年
- 設 計 監 理:山之内建築研究所/山之内裕一
- 施 工:㈱内池建設
- 撮 影:安達 治