小屋群・住居・街並み

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

小屋群住居は、海岸沿いの海抜30メートルの高台に建つ住宅である。強固な堤防に守られてはいるが、強風をまともに受けるため、住宅は堤防上面から3メートルほど掘り下げた敷地に建っている。平面形は、用意された敷地の形に合わせている。また、敷地内に3台以上の駐車スペースが求められた。私たちの提案は、一辺7.5mの正方形から1/7.5mの三角形を切り取った台形。台形に統合され、あるいは拡散されていくかたちの展開を試みることであった。噴火湾に面する電信浜の上、悪天候の日は強風が直撃する。そこで、背景に見える景観のベンチマークでもある測量山のなだらかなスカイラインに合わせ、1/7.5勾配の片流れ屋根を向い合せたファサードをつくった。平面を直立させ、無理のない風の流れをつくっている。

構造上は連続している2戸の住居で構成される長屋建共同住宅である。同じ建築面積をもつ平屋(HOUSE1)と2階建て(HOUSE2)の組み合わせによる。平屋(HOUSE1)は、CB造。2階建て(HOUSE2)は、2階のみ木造である。CB造は、構造上の重心を低くするために採用し、強風対策と遮音効果を期待している。

小屋群住居は、「ひとり街並み」ともいうべき分棟型住宅の試みである。先達としてリスペクトする住宅がある。山本理顕氏「岡山の住宅」は、敷地境界壁に向かって離散的に配置され、西沢立衛氏「森山邸」は街への視座からランダムな関係性をつくる。どちらも考え抜かれた平面の分棟である。しかし、「小屋群住居」は、その両者とも異なっている。いわばアノニマスに数世代かけて家族が紡いだ増築だらけの住宅の形姿を、過ぎた時間をさかのぼり意図的に構築する試みである。だから風景だけが分棟できればいい。そうすることで街並みを、個の敷地の中に構築できると考えている。

また、1970年代、住宅をフラットに思考した故・黒澤隆氏「個室群住居」に名前の着想を得ていることを付記しておきたい。

小屋群住居H  詳細情報

  • 所   在 :北海道室蘭市幸町
  • 構造・規模 :補強コンクリートブロック造、一部木造混構造
  • 敷地面積 :544.48㎡
  • 延床面積 :160.65㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :東海工業株式会社
  • 竣  工 :2015年
  • 撮   影 :安達 治

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