適材適所

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

今回は、CB造ではなくRC造である。旧知の彫刻家からアトリエ建設の相談をいただいたのが、そもそもの始まりだった。聞けば、農業用のプレハブ小屋の利用を考えているという。軽快な構造で面白いものになりそうだと思い少し調べてみると、クライアントが検討をしていたのは確認申請も通らない構造的にすこぶる不安定なものだと分かった。そこで、農業用のプレハブ小屋の利用ではダメですね、と言うとそれでは設計してほしいということになった。

クライアントは、石材と金属を使った彫刻を制作するため、重量のある石材や金属を吊るす移動式のホイストクレーンが必要だという。また、石材を加工するときに発生する粉塵、金属を加工する際の防塵それらの作業を同時におこなうために内部を大きく2分割する必要があるという。作業中に仮眠する居住スペースや水回りなども要求された。これはもう、住居と言ってもいいのである。 敷地の地名は、長沼である。見渡す限りまわりは水田地帯、地盤が良いはずがない。相当長さの杭を打って、基礎をつくった。2mほどの高さに柱と梁を架けた。ここまでは、RC造で作った。コンクリートブロックは、RC架構の間を埋める外壁および内壁として考えた。屋根はS造の半円ボールトにした。アーチの頂部にクレーンを走らせることを考えていたからだ。この時点で、サッシの工事費に占める比重が大きいと判断したので、いわゆる建具は諦め、樹脂版を全面に張った妻面外壁から主な採光を取ることにした。外壁とボールト屋根のジョイント部分に偏光ガラスブロックを一列に並べ、スリット状に光を入れる工夫をした。徹底したディテールの省略と施工業者の協力もあり、なんとか農業用のプレハブ小屋程度の予算で収まった。奇跡だと思った。そして、建築は適材適所につくるものだとも思ったのである。

アトリエMOMO  詳細情報

  • 所   在 :北海道長沼町
  • 構造・規模 :鉄骨造、2階建て
  • 敷地面積 :2,166.37㎡
  • 延床面積 :510.65㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :エムテック
  • 竣  工 :1994年
  • 撮  影  :半村 隆嗣

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