交差点の家

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

美園(みその)の家は、交差点をはさんで向かい合う都市公園に視線を開放した住宅です。公園の緑が交差点を飛び越えて(実際、小鳥や虫などが往来するのです)住宅の庭に連続することを意図した住宅です。一軒の戸建住宅にできることはそれほど多くはありませんが、今回、隣接する公園の緑を拡張することで道路をはさんで街区に緑の連続性をつくりだすことが可能となった事例を紹介します。

およそ20年前のこと、老朽化した住宅の建て替えです。できる限り敷地に余白を残したい、大切に育てた樹木はそのままにしておきたい、設計時にクライアントから示された条件でした。敷地は、二面を道路に接した角地です。建物は、交差点をはさんで公園と向き合うことが意図されました。一階は、敷地境界線に沿って木塀をめぐらし、道路レベルからの視線を遮ると同時に小さなプライベート庭を囲い込んでいます。二階は、ゆったりと湾曲するコンクリートブロックの外壁面が交差点の先の公園に向け張り出しています。三階は、外断熱されたボールト屋根の切断面がつくる開口部が公園に向き合います。平面一階は、プライベート庭に面して、小さなゲストルームと独立した老人室とが向き合い、二階は居間が中心、三階は主寝室と大きな納戸と屋外に木塀で囲われた屋上テラスが設けられました。ここでも屋外そして交差点と向き合っています。交差点にある既存樹木は、竹格子の隙間から枝葉を伸ばして交差点に柔らかい雰囲気を醸し出し、道行く人々に楽しみを提供し、そして、20年を経た現在、地域に緑の恩恵を還元しています。

美園の家  詳細情報

  • 所   在 :北海道札幌市豊平区美園
  • 構造・規模 :補強コンクリートブロック造、3階建
  • 敷地面積 :238.05㎡
  • 延床面積 :154.26㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :松田工務店
  • 竣  工 :1993年

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