無人駅の物置小屋

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

見るほどに謎の小屋だ。初めての出会いは、数年前。一目見て気に入った。近づくと外形寸法は約2メートル×約2メートル、カラー鉄板葺き片流れ屋根を載せていて手を伸ばせば届く高さだ。ブロック壁は風雪に耐えて美しく、表面が自然なままに洗い出されている。モルタル目地は芋目地ではなく破れ目地、石やレンガの組積造同様なんとも言えない懐かしさが漂う。

場所は北海道の日高地方。代替バス運行が行われている鉄道駅の脇に建ち、駅舎や駅名標識に負けない存在感を放つ。地域の生活基盤の鉄道施設にとって、この小さな物置小屋も欠かせない構成要素。それが、コンクリートブロックでできていることに私は感動するのである。歴史をさかのぼると北海道には防寒住宅をコンクリートブロックで作ってきた約70年の蓄積がある。鉄道や住宅などのインフラを支えてきた重要素材なのである。もう一度よく見てみると、唯一の開口部である引き違い扉の上に「保管庫一号」と記した金属プレートが固定されている。そして、コンクリート製マグサ上のブロックには「苫小牧ブロック」の文字も読める。こうした資料を読み解く作業は今後に期待したい。ちなみにブロック寸法は200ミリ×400ミリで現行JIS規格のブロック寸法とは異なっている。ますます謎が深まるばかりなのだ。

無人駅の物置小屋  詳細情報

  • 所   在 :北海道日高郡浦河町荻伏
  • 構造・規模 :コンクリートブロック造、平屋建
  • 敷地面積 :約3.24㎡
  • 施   工 :不明

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