北海道の民家

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

私の三十年来の付き合いで建築専門書ばかりを扱う本屋がいる。札幌という地域に合っているらしく、店舗を構えているのではなく定期的「行商」で顧客のほとんどが設計事務所という彼が運んできた「日本の民家(二川幸夫著)」というモノクローム写真集がある。初版は1957年刊行、近年再版された名著だ。建築家を志していた若き日の二川幸夫は白川の民家との強烈な出会いで写真家になった。白川の民家とは、ご存知のようにユネスコの世界遺産、白川郷・五箇山の合掌造り集落のことで概ね江戸末期から明治期にかけて建てられたものだ。民家には人の一生を左右する力がある。

ところで、私が住む北海道にも民家と呼べるものがある。「民家というのはその地方の気候風土にぴったり合って住みやすく、だれでもつくれてしかも形が洗練されている庶民住宅のことである。(足達富士夫)」と評される三角屋根コンクリートブロック住宅がまさにそれ、北海道の民家だ。1953年寒住法(北海道防寒住宅建設等促進法)が制定されて以降、庶民の住宅として北海道内に北海道住宅供給公社により1万2千戸が供給された。その後、木造住宅が主流となり1988年北方型住宅、きた住まいる住宅へ、北海道独自の産官学連携した歴史がある。本屋が顔を見せるたび、起点となった三角屋根コンクリートブロック住宅は北海道の民家として見直されなければならないと思うのである。

北海道の民家  詳細情報

  • 所   在 :北海道江別市
  • 構造・規模 :補強CB造2階建
  • 敷地面積 :266.00㎡
  • 延床面積 :62.10㎡
  • 設 計 :不明
  • 施   工 :不明
  • 図版・写真 :山之内建築研究所
  • 足達富士夫(あだちふじお)元北大名誉教授 1932年~2002年
  • 二川幸夫(ふたがわゆきお)写真家 1932年~2013年

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