クライアントの夢と建築と。
住宅に限らず設計者は、クライアントと様々にコミュニケーションをとる。私は、設計をスタートするにあたり設計条件やそのほかの話をもれなく聞き取るのは重要な設計作業だと考えている。クライアントと建築への夢や想いを語るのは楽しい時間でもある。しかし、至福の時間は瞬く間に過ぎて設計監理の実務は待ったなしで迫りくる。数か月間の山のような作業も峠を越えた時ふと思い出すことがあった。設計者の私に依頼する決め手は何だったのだろう。多分最初にクライアントから聞いたはずなのだが、再度確認しておきたい。
クライアントは、2年前に完成した「カスタマイズできる家」を気に入り、住宅設計を私に依頼した。その住宅が完成目前の過日、改めて質問した。クライアントの心をつかんだのは、かつての三角屋根住宅の雰囲気を色濃く残している屋根型と、コンクリートブロックの壁だった。内外壁に多用したトドマツ材による柔らかい表情や、タモ無垢材フローリング床材の直接身体に伝わる触感も訴えたという。そして室内の奥行き感や天井高さによる開放感、そこに降り注ぐ自然光の役割が大きいともいう。現場が進みリアルな空間を体感していく中で、たびたびクライアントから漏れ聞いた言葉でもある。それらは設計時に意図した事柄ではあるが、建築を媒介に伝わっていることが何より嬉しい。とりわけ自然光の存在は、北海道の住宅にとって大切なものだから。
(山之内裕一/山之内建築研究所)
2020年9月21日第3105号
クライアントの夢と建築と。 詳細情報
- プロジェクト2021ハウス 江別の平屋1 (プロジェクト2020HOUSE1)
- 所 在:北海道江別市
- 構造規模:補強CB造および木造、平屋
- 敷地面積:266.00㎡
- 延床面積:107.97㎡
- 設計監理:山之内建築研究所/山之内裕一
- 施 工:松浦建設
- ブロック施工:よねざわ工業
- 設 計:2019年9月~2020年1月
- 竣 工:2020年9月末予定
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