新解釈コンクリートブロックの家(北海道様式)
北海道のブロック住宅は、1953年の寒地住宅促進法制定から、始まると言っても過言ではない。快適さを求め、寒冷な風土条件との闘いの歴史だ。当時、補強コンクリートブロック造住宅は、木造住宅に無い気密性を実現した。すきま風をふせぐ、それだけで画期的に暖かくなる。住宅金融公庫融資制度も後押し、シンプルでコンパクトな中心LDK型、三角屋根ブロック住宅が完成した。
温暖地域にみられるような縁側や半屋外空間は合理的に切り捨てられシンプルに、通路や部屋は集約されコンパクトな平面構成へ向かう。その結果、屋外の作業が難しい冬場には、全てが屋内に持ち込まれた。居間、食堂、台所が大きくひとくくりにされる。前述した中心LDK型住宅、北海道様式の成立である。(参考文献:北海道の住宅と住様式/1982年、足達富士夫編著)
今夏に完成した「江別の平屋1」は、北海道の住宅が持つ平面構成原理を読み解き、新しい解釈を加えている。
第一に、屋内に中心空間をつくる。玄関から勝手口まで、居間から台所まで、一体の連続空間とした。東西南北にクロスして連続する十字プランとしている。
第二に、中心空間に自然光を取込む。屋外から持ち込まれる様々な物や生活を、室内で無理なく成立させるのが自然光の力。外観を印象付けるハイサイドライトに、中心空間をまとめる役割を与えた。
第三に、コンクリートブロックの素材感を活かす。
屋内に、外の開放感がある。
自由に歩き回ることができる開放的な室内は、自然光あふれる吹抜けとコンクリートブロック壁でつくる。
最後は、コンクリートブロック積壁の完成度。他に加えることも引くことも必要ないほどの完璧さは、ブロック職人の力量である。
この住宅に特徴的な屋内の屋外化と十字型プランは、中心LDK型プランの新解釈。何よりそれに応えてくれたブロック職人とブロックメーカーに深く感謝し、こうした取り組みが永く持続することを祈念している。
(山之内裕一/山之内建築研究所)
2021年1月1日第3119号
新解釈コンクリートブロックの家(北海道様式) 詳細情報
- ダブルサークルハウス
- 所 在:フィリピン、沖縄
- 構 造:補強コンクリートブロック造、2階建
- 敷地面積:349.44㎡
- 延床面積:150.00㎡
- 施 工:未定
- 設計監理:山之内建築研究所/山之内裕一
- パース製作:田名部伸紀建築設計事務所/田名部伸紀