成果のリサイクル

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

いうまでもなくコンクリートブロック造は構造力学、工法そして材料学として研究されている。多くの先達による研究成果を根拠として基準がつくられ運用される。その成果の延長上に私たち建築家が様々に嗜好を凝らした設計をすることが可能になる。私もその一人である。設計はクライアントの求めに応じて成果品となり、敷地を得て施工者の手に移る。施工者は材料を調達し工法を駆使して建築する。そこには研究→設計→施工の循環が生まれている。こうした循環が数を増すごとに街や田園に魅力のある建物が数多く生まれることになるのである。現在、コンクリートブロック建築に、こうした循環、つまり成果のサイクルがうまく回っていないのではないかと思う。今年経験した日本建築学会の構造分野での論文発表は、新鮮な体験だった。建築家の私が発表できるのは設計に関わること以外にはない。オンラインで全国からアクセスする形式で、選りすぐりの研究者の方々による発表の中にあって、私の発表は異質感があった。最後に、進行役からコンクリートブロックの漏水はどうするのかという、設計の要点に関わる質問があった。その時、構造の研究発表「コンクリートブロックの可能性について」が、設計者と研究者が同じ方向を向いたように思えた。私たち建築家は研究者の成果を理解しそれを展開する責任がある。また、施工者や研究者は、設計者が何を感じているのか想像力を働かせる必要があるのだと思う。「江別の平屋Ⅱ」のハイサイドライトから自然採光を取込む十字プランは、既往の積雪寒冷地の住様式と住宅計画研究の成果がベースだ。そして、補強コンクリートブロック造住宅は、半世紀以上の技術の歴史を継承している。私は、土地の風土環境に適した合理的な工法と空間構成を備えたデザインを追求したいと思う。

江別の平屋Ⅱ  詳細情報

  • 所   在 :北海道江別市
  • 構造・規模 :補強CB造一部木造、平屋
  • 敷地面積  :300.00㎡
  • 延床面積  :101.26㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :松浦建設
  • ブロック施工:よねざわ工業
  • 竣  工 :2021年3月
  • 撮   影 :佐々木育弥

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