CB建築の講義・その5

山之内裕一・山之内建築研究所

建築は文化の手段。文化は人がつくるものだから、人の移動と共に文化が伝播する。今回は、建築文化が地域にどのような形で伝わるのか考えてみたい。

私が住む北海道では明治期そして太平洋戦争後、全国各地から多くの人々が移住し住宅を建てた。ところが北海道は極寒の地、住宅は寒さと戦わねばならない。そこで登場したのがコンクリートブロック住宅。しかし、人々は慣れ親しんだ生活様式を急に変えることは難しく、以前と同じ日常を持ち込み同質化する。そもそもコンクリートブロックは西欧伝来の技術、それを日本の風土に重ね、いわば建築文化を異質化する。

私がコンクリートブロック住宅を設計する場合、建主の生活様式とコンクリートブロックの建築様式との中間に立ち調整をする。例を挙げると、①木造日本家屋の縁側、②和室床の畳敷き、③陰影をつくる障子、④座視に適度な天井高などだ。まず初めに縁側は、雪国ではほとんど無効だが有用な間を建物まわりにつくる。次に、正方形の半帖ヘリ無し畳は、コンクリートブロックのプロポーションと相通じる。そして、太鼓張り障子は、骨組みの横桟間隔をブロック目地間隔と同調させた。最後に、座して丁度よい天井高2200mmは、フラットスラブ底までの寸法。つまり設計完了時には木造特有の要素がコンクリートブロックと出会い、工法上の簡素化を経てシンプルな形に落ち着くことになる。

これらは、北海道における建築文化伝播の一例であり、新しい美意識とも言えるだろう。

小屋群住居O  詳細情報

  • 所   在 :北海道札幌市北区
  • 構造・規模 :補強CB造一部木造、2階建
  • 敷 地 面 積 :305.60㎡
  • 延 床 面 積 :159.43㎡
  • 設 計 監 理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施 工 :岩田住宅
  • ブロック施工:よねざわ工業
  • 竣   工 :2013年
  • 撮   影 :安達 治

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