新たなステージへ  

週刊ブロック通信・論説委員 大月隆行(ランデス 代表取締役会長)

 謹んで新年のお祝いを申し上げます。令和6年の新年が穏やかな正月でスタートしたと思った矢先、元日の16時過ぎに、震度7の能登半島地震の速報が入りました。現時点で、220人を越える方々がお亡くなりになり、今なお安否不明の多くの方々が居られます。そして、未だに多くの孤立集落があり、2万人以上の被災者が避難生活を余儀なくされている状況の中、命を繋ぐ懸命の捜索、救護の支援が続いています。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りすると共に、多くの被災された皆様に心よりお見舞い申し上げる次第です。一日も早く安否確認と被災者の安全が確保され、復旧・復興が為されることを念願致します。

 今回の地震は、神戸大震災を凌ぐ揺れで、輪島市の漁港では4m近くの隆起が確認されており、85kmに及ぶ海岸沿いのエリアで海底が隆起しているとのことであり、地震エネルギーの凄まじさを思い知らされた。日本は、1995年の阪神・淡路大震災から地震活動期に入ったと言われ、2011年の東日本大震災などの震度7を超える地震が頻発している。南海トラフ地震などのマグニチュード8~9のプレート型地震の発生確率は30年間で70~80%とされており、中部地方整備局が発表している情報では、3連動プレート型地震が起きると、32.2万人の死者・行方不明者が発生するとされている。ハード対策のみでの完全な防災は不可能であるため、各地でハザードマップをベースにして自主防災組織による避難訓練が行われている。しかし、今後必ず起きるであろうと想定されている激甚な大地震や豪雨災害への抜本的な解決策は、事前に安全な場所に移住することだと考える。国家の存続のためにも、デジタル田園都市国家構想を早急に進め、最悪の事態を避ける手立てが持続可能な日本であるためには最重要な政策ではないだろうか。

 一方、地球温暖化を原因とした豪雨災害や森林火災は既に起きている現実であり、今後ますます加速されることが予想される。人々の命や財産を守ることは勿論であるが、旱魃による食糧難も必ず起きることが推察される。この地球温暖化は産業革命以来の化石燃料を大量に活用した文明の発展が招いたものであり、その意味では人災であると考えられる。地球温暖化への緩和策としてCN(カーボンニュートラル)への行動に早急に切り替えると共に、既に起きている水害への適応策として、防災・減災への取り組みは緊急の課題だ。人類は、自然が与えてくれる豊かな恩恵への感謝と共に自然の破壊的なパワーによる脅威への畏怖の念を持って、自然への畏敬と謙虚な気持ちで生きることが必要で、このことは、日本人が長い年月を掛けて学んできた価値観だ。

 さて、 本年はいよいよ2024年問題と言われる、建設業、流通業における働き方改革への対応が実行される年だ。プレキャストコンクリート製品(以下、PCa)業界には建設現場での生産性向上に寄与する責任と使命を果たしていくことが求められる。品質を確保した長寿命の良質な製品の供給と地球温暖化リスクの緩和策としてのカーボンニュートラル(以下、CN)への取組みを両立させながら、次々と襲ってくる自然災害への適応と復旧・復興、建設業の生産性向上への貢献をせねばならない。その上で、各社の雇用を確保し、社員の幸せを実現するという社会的な責任をも担っている。ご存じのとおり、国土交通省主催のi-constructionで建設業の技能職や若手人材の減少への対策として3つのトップランナー施策が8年間に亘って協議されてきた。その中の一つのコンクリート工の規格の標準化としてPCaが取り上げられ、VfMによる設計基準に関する検討が最終段階を迎えている。VfMについては、昨年から港湾構造物の設計において先行的に適用が始まっている。又、昨年は、土木学会から2023年制定コンクリート標準示方書「施工編」が発刊され、新たにPCaコンクリートの章が設けられた。PCaの耐久性に関する品質管理として水分浸透速度係数による管理や鉄筋かぶりの照査に関する考え方が示されるなど、これまでの産・学・官の連携による取り組みの一定の成果が示され、PCaの信頼性向上へのバックボーンができてきた。令和6年度からはいよいよその成果を発揮する年が始まる。経済はデフレ経済からインフレ好循環経済にシフトしてきており、PCaメーカー各社は生産性向上への努力とともに、エネルギーや資材価格の上昇を価格に転嫁する努力をしている。政府では2030年台半ばまでに最低賃金を1,500円にするとの方針を掲げており、今後はインフレへの対応と人材確保の観点から企業の存続には賃金アップや生産性の向上、職場環境の改善は必須事項である。そして、本年はGX(グリーントランスフォーメーション)による成長戦略へ向けてCNへの具体的な検討や試行が始まる。本年は、社会経済の大転換期であり、産業構造においても大きな変化が始まるものと推察する。

 令和6年は、PCa業界にとっては正に大きな責任を担って奮い立つ(辰)年になる。社会構造の変化への主体的な対応力は、自社の意識改革、行動改革に掛かっており、正に実行力、変革力が問われる。勇気ある挑戦と進歩発展の一年にしたい。

読者の皆様のご多幸とご健闘をお祈りいたします。

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