再生ガラス骨材の現状と将来展望 タイガーマシン製作所、北原会長に聞く1
タイガーマシン製作所(本社、岡山県高梁市落合町阿部、社長=北原剛正氏)が、廃棄太陽光パネルリサイクルに力を入れている。廃ガラスを再生骨材として再利用する取り組みで、各地で骨材不足が課題となっているコンクリート製品業界にとっても関連が深い。同社は、再生ガラス骨材のガイドラインの作成や事業化に向けた活動をガラス再資源化協議会と推進する一方、舗装ブロックで再生ガラス骨材を利活用すべく、舗装コンクリートブロック研究会(CPI)を設立した。再生ガラス骨材の現状と将来展望について、同社の北原哲五郎会長に話を聞いた。
―― コンクリート関連事業の状況はいかがですか
北原 国内市場は相変わらずで、新工場の建設や設備一式を更新するような大型の設備投資は少ないです。部分的な設備改造や更新、既存設備のオーバーホールなどの受注が中心で、今後もこの状況が継続すると思います。技術サービスのできる技術者の増員や設計陣の強化、また顧客工場の人手不足に対応する自動化・省力化分野の強化に力を入れています。海外市場は、特にアメリカが忙しくて、顧客から新たな機械の開発や改善を常に求められています。これが弊社の技術レベルのアップにつながっています。
●即時脱型コンクリート製品用再生ガラス骨材推進で顧客支援
―― 最近、タイガーグループでは廃棄太陽光パネルリサイクル関連に力を入れていると聞いています
北原 はい、出資している発泡ガラスの研究開発会社から、太陽光パネルの大量廃棄がいずれ大きな社会問題になると言われたのがきっかけです。早速、廃棄太陽光パネル処理とパネルの70%の重量を占める廃棄ガラス処理の現状について調査しました。ガラスのリサイクルは技術的に難しく、ほとんどは最終処分場で廃棄されています。最終処分場は受け入れ余力がなく、これに太陽光パネルの廃棄ガラス最大約50万トンが毎年追加となれば大変な問題になります。2017年に太陽光パネル解体装置の開発に取り掛かりましたが、同じ頃、環境省から廃棄ガラス処理の方策についてアンケート調査があり、発泡ガラスとコンクリート製品用の骨材化を提案しました。
―― コンクリートブロック用のガラス骨材化を推進しようと思われたのはなぜですか
北原 将来の骨材不足への懸念です。川砂や山砂、海砂が減っても砕石砂があるから、と何の対処もせずに時が経過してしまいました。今や砕石由来の骨材は60%を超え、新たな砕石場の確保も難しい状況です。既に骨材不足は世界的な課題で、中国やインドなどは輸出を禁止しています。日本は年間100万トンの砂を輸入していますが、いつ輸入できなくなるかわかりません。こうした骨材不足のリスクが高まっている時に、SDGsと脱炭素の大波がやって来たので、廃棄物の有効活用、特に廃棄ガラスの活用に着目した訳です。年間300万トンも廃棄されるガラスを骨材として活用できれば、骨材価格の上昇を抑える効果があり、社会貢献にもなります。
実は、これだけ大量の廃棄ガラスを有効活用できる方策は骨材化だけです。再生ガラス骨材をコンクリート製品用に使えないかと弊社の中央研究所で実験を繰り返し、またお客様にも実験の協力をお願いし、「ガラス骨材は流し込み製品より即時脱型製品に向いている」との結論を得ました。それで、まずコンクリートブロック業界でガラス骨材の使用を推進しようと決めました。
―― ガラス骨材は、なぜ流し込み製品には向いていないのでしょうか
北原 流し込み製品に使えない、と言っているのではありません。廃棄されたガラスを、より簡単に安価に、できるだけエネルギーを使わずに、CO2を出さずに加工したガラス骨材は即脱製品に向いている実験結果を得た、ということです。もっとコストをかけて加工すれば生コンにも、流し込み製品にも使えると思っていますが、それは将来の課題としています。今は即脱製品用骨材として普及させる仕組みを作り、具体的に行動を起こしたところです。
―― ガラス骨材を推進する仕組みや具体的な行動はどうなっていますか
北原 廃棄物を骨材にすることに否定的な意見を持つ方も大勢いますし、ガラスを使うとなれば、アルカリシリカ反応(ASR)を懸念される方も多いです。実際、過去にガラス骨材を使って失敗した事例も多いのです。ガラスの物性やASRなどをよく理解して、正しく使わないと痛い目に合うということです。ただ、こうした失敗例がいたずらに誇張されると、大量の廃棄ガラスを有効活用できる方策を失うことになりかねず、それは私達だけでなく社会的にも大きな損失となります。
そこで、まずガラス骨材の推進に賛同し、興味のあるお客様で取り組み、廃棄ガラス骨材を供給する側とも協力して、ガラス骨材を正しく使う態勢を整えることにしました。態勢が整えば、広く一緒にやりませんかと呼びかける方針です。
幸い、30年ほど前の日米共同研究プロジェクト(中高層ブロック建築技術の研究開発)で仲間だった加藤聡さんに再会して、加藤さんが代表理事を務める「ガラス再資源化協議会(GRCJ)」が進める、ガラスリサイクルに関する情報プラットフォーム作りの計画を知りました。私は、ガラス骨材化で大量の廃棄ガラスを資源化できること、そして既に実験を始めていることなどを説明し、加藤さんのアイデアをもとに、▽廃棄ガラス供給者▽ガラス骨材製造者▽ガラス骨材使用者―の3者間情報プラットフォーム構想がまとまりました。そして、弊社はガラス骨材使用者側の取りまとめを期待されることになったのです。ソフト制作は富士通が協力してくれ、AGCも役所もGRCJの廃棄ガラスの資源化の取り組みにエールを送ってくれています。8月に開催されたGRCJの総会・シンポジウムには、経済産業省の事務次官、環境省の大臣官房長、政府の再エネ廃棄物のリサイクルを協議する委員会の委員長、そしてAGCの会長が参加され、講和や講演を行いました。 廃棄太陽光パネルガラスの供給側が「太陽光パネルリユース・リサイクル協会(SPR2)」を立ち上げ、動きが急になってきたので、弊社もCPI(舗装コンクリートブロック研究会)を設立した次第です。GRCJ、SP2R、CPIの3者で、ガラス廃棄が大問題になるまでに情報プラットフォームを完成させ、再生ガラス骨材使用を推進したいですね。(次号に続く)