緑を生かすブロック

設計/山之内裕一・山之内建築研究所

敷地は、南面に静かで緑豊かな小公園に接している。50坪に満たない敷地の大きさは全く問題にならない。住宅の計画当初からこの小公園を含めた配置図が用意された。さらには、隣接する一街区を含めて計画対象と見ていた。いや、そうでも考えなければ独立したてのまだ若い建築家魂が抑えられなかったのだと思う。今から1/4世紀前のことだ。敷地として小公園を視野に入れることにより、住宅の外壁が公園の緑の背景にすることを思いついた。住宅が決して個人のものだけではなく、少なくとも外観は通りすがりに見ている他者のものなのだ。住宅を設計することが地域を視野に入れることであり、他者を意識することであるというのをこの時、学んだ。

住宅の壁面は、緩やかなカーブを描いて、法的な壁面後退線まで張り出している。外壁面は半径14メートルの弧を描いて敷地内で途切れるのだが、その延長線をたどって隣地を取り込むように想像の円弧を結んでいる。小公園を眺望するために、居間を2階に配している。居間は階段室を取り込んで、できる限り開放的にした。階段の踊場は、小公園への展望台となった。踊場は、ちょうど公園内にあるスベリ台頂部の高さに設定し、見通しが効くサッシで囲い過半を外壁から突出させた。踊場は、変化に富んだ眺望を得られたと同時に、ともすれば閉鎖的になりがちな住宅を開放的にし、内と外を視覚的につなぐ接点として意味を持つことになった。

何はともあれグレー色のブロックが公園の緑を生かす住宅をつくっているかけがえのない建築素材なのだ。

西野三角公園の家  詳細情報

  • 所   在 :北海道札幌市西区
  • 構造・規模 :補強コンクリートブロック造、2階建
  • 敷地面積 :159.00㎡
  • 延床面積 :114.78㎡
  • 設計監理 :山之内建築研究所/山之内裕一
  • 施   工 :株式会社松田工務店
  • 竣  工 :1989年
  • 撮 影 :安達 治

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